全 情 報

ID番号 01912
事件名 雇用関係存在等確認請求事件
いわゆる事件名 東版事件
争点
事案概要  二ケ月間の病気欠勤中に競業会社に勤務しまた会社従業員に退職又は独立を勧誘したとして懲戒解雇された従業員が、右懲戒解雇は理由がなく無効であるとして雇用関係の存在確認等求めた事例。(請求認容)
参照法条 労働基準法2章,89条1項9号
体系項目 懲戒・懲戒解雇 / 懲戒事由 / 業務命令拒否・違反
裁判年月日 1984年2月28日
裁判所名 東京地
裁判形式 判決
事件番号 昭和57年 (ワ) 914 
裁判結果 棄却、却下
出典 労経速報1184号17頁
審級関係
評釈論文
判決理由  原告は病気のため被告会社を欠勤している間に、競業関係にあるA株式会社に遊びに行き、その際に頼まれるままに写植の仕事を行ったもので、極めて軽率であったといわなければならないが、常勤として仕事をしたのではなく、元の同僚のところへ遊びに行き、その機会に仕事を手伝った程度であり、また、原告は被告会社においてその機密事項を扱う立場になかったことを考えると、いまだ就業規則七八条三号に定める懲戒解雇の理由としての「他の営業に従事し、または他に勤務したとき」には該当しないものと解するのが相当である。
 (中 略)
 原告が被告の従業員数人に対して退職又は独立を勧誘したということについては、これにそう被告代表者の供述は、原告本人尋問の結果に照らしてにわかに信用できず、他に右の事実を認めるに足りる証拠はない。また、証人Bの証言、原告本人尋問の結果及び被告代表者尋問の結果によれば、原告の父Bは、被告会社の実質上の株主は自分であると主張して被告会社取締役の本多ことに対して被告会社の株式の処分禁止の仮処分を申請してその旨の仮処分決定を得たこと、更に、Bは、被告会社代表取締役Cに対して、「自分が社主であるからお前は首だ」等と暴言をはいたことが認められるけれども、右の各証拠によれば、これらの行為は専らBが原告に相談なしに行ったものであるものと認められ、この認定に反する証拠はないから、Bが原告の父であるとはいってもこれらの行為の責任を原告に負わせることはできない。
 従って、就業規則七八条一三号に該当する事実があるとの被告の主張も採用できない。
 よって、被告のした解雇は、その理由を欠き、無効といわなければならない。