全 情 報

ID番号 01982
事件名 地位保全仮処分申請控訴事件
いわゆる事件名 岩手県北自動車事件
争点
事案概要  運賃箱より金銭を窃取したとして普通解雇されたバスの運転手が、金銭窃取の事実はなく右解雇は無効であるとして地位保全等求めた仮処分申請事件の控訴審。(控訴認容、労働者敗訴)
参照法条 民法1条3項
労働基準法89条1項9号
体系項目 懲戒・懲戒解雇 / 懲戒解雇の普通解雇への転換・関係
裁判年月日 1983年1月28日
裁判所名 仙台高
裁判形式 判決
事件番号 昭和55年 (ネ) 78 
裁判結果 認容
出典 労経速報1151号10頁
審級関係 一審/盛岡地宮古支/昭55. 1.25/昭和53年(ヨ)10号
評釈論文
判決理由  思うに、懲戒解雇と普通解雇とでは解雇事由や解雇手続が異なるため、懲戒解雇事由がある場合には常に普通解雇をなし得るとまでは解することができないが、本件において、被控訴人は自ら懲戒解雇事由があることを認めたうえで、懲戒解雇を避けるため自発的に退職する意向を示してその願出をなし、控訴会社においてこれを容れて解雇予告手当を支給して解雇をしたのであるから、かかる場合、控訴会社が被控訴人に対してなした解雇は普通解雇としての効力を有するものと解するを相当する。なお、控訴会社は被控訴人に対し退職金を支給していないこと前記のとおりであるが、そもそも、退職金を支給するか否かは解雇の効力が生じた後の問題であって、これが解雇の効力を左右するものではないのみならず、(書証略)によると、控訴会社においては、勤務成績不良の者や重大な過失によって会社に損害を与えた者は懲戒解雇された者と同じく退職金を支給しないか又は減額して支給することとなっていることが疎明されるから、控訴会社が被控訴人に退職金を支給しなかったことは、未だ本件解雇が有効であることの妨げにはならないと解する。
 ところで、被控訴人が昭和五三年五月中旬頃から同年七月二九日頃までの間に本件コードを用い、また、更に模造キイも用いてワンマン機器から反復して合計三万円を下らない一〇〇円硬貨を計画的に窃取した前記所為は、就業規則四七条五号の懲戒解雇事由に該当するものと認められるのであるが、(人証略)によると、控訴会社は被控訴人を懲戒解雇に付すべきところ、被控訴人の今後の生活や再就職のことなどを配慮し、被控訴人の願出を容れて退職願の提出を受けて普通解雇にしたことが疎明される。