全 情 報

ID番号 03004
事件名 地位保全等仮処分申請事件
いわゆる事件名 アサヒ三教事件
争点
事案概要  外国人英語教師としての雇用契約は、労使間で合意された契約期間が満了したことにより終了したとされた事例。
 外国人英語教師に対する、勤労意欲に欠けることあるいは無断欠勤等の理由による懲戒解雇につき、権利濫用にあたり無効とした事例。
参照法条 労働基準法2章
民法1条3項
民法628条
体系項目 懲戒・懲戒解雇 / 懲戒事由 / 職務懈怠・欠勤
解雇(民事) / 短期労働契約の更新拒否(雇止め)
裁判年月日 1987年1月26日
裁判所名 東京地
裁判形式 決定
事件番号 昭和60年 (ヨ) 2319 
裁判結果 一部認容
出典 労働判例497号138頁
審級関係
評釈論文
判決理由 〔解雇-短期労働契約の更新拒否(雇止め)〕
 3 次に、債権者Xは昭和六〇年六月一〇日に雇用契約の期限を定めのないものとする旨の合意がされたと主張するので、この点について検討する。
 疎明資料及び審尋の結果によれば、同年五月二〇日ころ債務者会社の外国人教師によりA組合が結成され、同債権者の時間給減額に対して外国人教師間で同情がよせられたこともあって、同月末ころ、同債権者と債務者会社との間で、債務者会社は同債権者の時間給を減額の当初にさかのぼって三〇〇〇円に復し、差額分の支払をすること、同債権者は生徒や他の教師に入れ墨を見せないこと、同債権者の授業時間を増加することが合意され、同年六月一〇日付けでその旨の書面(疎甲第二号証)が作成されたこと、その書面では同債権者の雇用の期間については何らふれられていないことが一応認められる。債権者Xは、雇用期間が同年八月二八日までであるとすると、八月一日から二〇日までの夏休みの期間を考慮すると、残された期間は極めて短いので、授業時間を増加する約束などするはずがなく、右書面作成当時は雇用期間の延長が前提となっていると主張するけれども、仮りに雇用期間延長の合意がされたとするなら、そのことが書面上明記されることが自然であって、そのような記載がないことは、そのような合意がなかったことをうかがわせる有力な資料といえる。他に雇用期間を変更する旨の合意があったことを認めるに足りる疎明はない。
 4 そうすると、債権者Xの雇用契約は昭和六〇年八月二八日をもって終了したものということになるから、その後も雇用契約が存続することを前提とする同債権者の本件申請は、その余の点について判断するまでもなく失当である。
〔懲戒・懲戒解雇-懲戒事由-職務懈怠・欠勤〕
 (七) 以上のとおり、債務者の主張する解雇理由のうち、懲戒処分の理由となり得るのは、前記(三)の(4)の昭和六〇年七月二九日の二時間の無断欠勤のみであるが、これをもって解雇の理由とするのは解雇権の濫用であって、無効であることは明らかである。