ID番号 | : | 03006 |
事件名 | : | 雇用関係存在確認等請求事件 |
いわゆる事件名 | : | 日本国有鉄道事件 |
争点 | : | |
事案概要 | : | 国鉄職員が兼職の承認を受けないまま市議会議員選挙に立候補し、当選の告知を受けた場合、その後の合理的期間内に兼職の承認をうけないかぎり、右告知を受けた日に職員としての地位を失うとした事例。 |
参照法条 | : | 労働基準法7条 公職選挙法103条1項 日本国有鉄道法26条2項 |
体系項目 | : | 労基法の基本原則(民事) / 公民権行使 / 公民権行使と休職・解雇 懲戒・懲戒解雇 / 懲戒事由 / 二重就職・競業避止 |
裁判年月日 | : | 1987年1月28日 |
裁判所名 | : | 千葉地 |
裁判形式 | : | 判決 |
事件番号 | : | 昭和58年 (ワ) 298 |
裁判結果 | : | 棄却 |
出典 | : | 労働民例集38巻1号8頁/時報1233号143頁/タイムズ627号79頁/労働判例490号6頁 |
審級関係 | : | |
評釈論文 | : | 綿貫芳源・判例評論346〔判例時報1250〕58~64頁1987年12月 |
判決理由 | : | 〔労基法の基本原則-公民権行使-公民権行使と休職・解雇〕 〔懲戒・懲戒解雇-懲戒事由-二重就職・競業避止〕 前記公選法一〇三条一項の趣旨からしても、当選の告知の時点において総裁の承認を得ているかどうかによつて被告職員を辞職したとみなすかどうか(承認を得ていなければ辞職したとみなすことになる。)が決せられるのであるから、日鉄法二六条二項及び公選法一〇三条一項の各規定からすると、被告職員は、市議会議員の当選の告知前に総裁の承認を得ていない限り、その職を失うというのが大原則であると解する外はない。 (中略) (三) しかし、当裁判所は、更に、被告職員が市議会議員の当選の告知の時に総裁の承認を得ていなくとも、その時から合理的な期間内に総裁の兼職承認を得た場合には、公選法一〇三条一項のみなし辞職の規定は適用されない(換言すれば、公選法一〇三条一項の規定による失職の効果を争う者は、当選の告知の時又はその後の合理的期間内における総裁の承認の存在を主張立証すべきである。)と解する。 けだし、公選法は、日鉄法二六条二項の改正規定を正面からは予定していなかつたと解されるところ、同項但書に前記の「議員である者で」との文言が存在すること、被告のような大企業の場合に短期間で兼職承認を得ることが無理な場合も考えられるが、法は不可能を強いるものではないこと、被告の兼職基準規程の運用においても当選の相当期間後に兼職承認通知の書面が発せられていたこと等を併せ考察するときは、公選法一〇三条一項の解釈も、その趣旨に反しない限り、日鉄法二六条二項の改正によつて、それなりに変容を受けて然るべきものがあり、けつきょくにおいて兼職の承認があつた場合は、当選の告知の時に承認があつた場合と同視しうる旨、弾力的な解釈をしても、公選法の前記の趣旨に反することにはならないからである。そして、逆に、当選の告知後、相当期間内に総裁の承認がなかつた場合には、原則に戻つて、当選の告知の時に職を辞したとの効力の発生を覆すに由ないこととならざるをえない。本訴における被告の抗弁は、この趣旨の主張を包含していると解することができる。 |