全 情 報

ID番号 03011
事件名 地位確認請求事件
いわゆる事件名 郵政省職員事件
争点
事案概要  懲戒免職処分を受けた郵政省職員が、人事院に審査請求をして修正判定を受けるまでの間に市会議員に立候補して当選したケースで、兼職禁止が問題とされた事例。
参照法条 公職選挙法90条
公職選挙法103条2項
国家公務員法102条2項
体系項目 解雇(民事) / 解雇事由 / 二重就職・兼業・アルバイト
裁判年月日 1987年2月4日
裁判所名 東京地
裁判形式 判決
事件番号 昭和60年 (行ウ) 59 
裁判結果 一部認容(控訴)
出典 労働民例集38巻1号55頁/時報1224号129頁/タイムズ631号153頁/労働判例493号61頁/訟務月報33巻9号2315頁
審級関係
評釈論文 野間賢・季刊労働法144号195~197頁1987年7月
判決理由 〔解雇-解雇事由-二重就職・兼業〕
 国家公務員法一〇二条二項は、「職員は、公選による公職の候補者となることができない。」と定め、また、公選法八九条一項本文は、「国又は地方公共団体の公務員は、在職中、公職の侯補者となることができない。」と定めて、公務員(同条一項ただし書及び二項に規定する者を除く。以下同じ。)の公職への立候補の制限を規定し、このような制限を担保するための方策として、公選法九〇条において、公選法八九条で立候補が制限されている公務員が公職の候補者として届出等をしたときには、その届出の日に公務員たることを辞したものとみなす旨定めている。国家公務員法及び公選法がこのように公務員の公職への立候補を制限したのは、公務員が立候補を行うことにより当該公務員が現に従事している職務に専念することができなくなることや、公務員としての地位を利用して選挙活動を行うことから生じる弊害を防止し、あわせて選挙の結果のいかんにかかわらず自己の地位を保身し得る余地を残すことが安易な立候補を招来することからこれを抑制すること等に基づくものであり、このような目的の実現を図るために、個々の場合においてその弊害の有無及び程度を個別的に判定することが困難であるところから、一律にこれを禁止して、立候補の届出があった場合には公務員たることを辞したものとみなすことにしたものと解することができる。そして、このように公務員たることを辞したものとみなされるための要件として法が規定をしているのは、公務員が在職中であること及び公職の候補者として届出をし又は推薦届出をされたことの二点であつて、この場合の「在職中」ということの意義については、法文上も特に何らの留保もない以上、当該公務員が停職や休職中である場合を含むものと解することができる。
(中略)
 公職の候補者あるいは当選人としての地位とそのような地位にあることを許さない公務員たる地位の併存が生じた場合の措置についての公選法の定めをみると、公選法はそのような地位の併存に至つた事情として一般的に考え得る事由を想定の上、該当者についての地位を一律にいずれかに規定するもの(この場合には地位の併存が生じるに至つた直近の該当者の意思によることになる。九〇条、九一条、一〇三条一項)と該当者に地位の併存が生じた時点でそのいずれかを選択させることにより解決を図るもの(一〇三条二項、四項)とが存することを指摘することができる。そして、本件の場合には事後的に地位の併存が生じるに至つた公選法一〇三条二項の場合と事情が類似していることから、その規定を類推適用して、原告において本件判定があつたことを知つた後速やかに市会議員の職を辞任しないかぎり、公務員の地位を失うものと解するのが相当である(この場合には判定の効力発生の日に公務員の地位を失うものと解するのが相当である。)。