全 情 報

ID番号 03039
事件名 地位保全仮処分申請事件
いわゆる事件名 津軽三年味噌事件
争点
事案概要  東京営業所の販売成績不振を打開するため常務取締役、東京営業所所長待遇、一〇年以上の身分保障で他社から引き抜いた者が期待した業績をあげなかったことを理由として解雇されたケースでその効力が争われた事例。
参照法条 労働基準法2章
労働基準法89条1項3号
体系項目 解雇(民事) / 解雇事由 / 勤務成績不良・勤務態度
裁判年月日 1987年3月30日
裁判所名 東京地
裁判形式 判決
事件番号 昭和61年 (ヨ) 2335 
裁判結果 一部認容
出典 労経速報1289号3頁/労働判例495号12頁
審級関係
評釈論文
判決理由 〔解雇-解雇事由-勤務成績不良・勤務態度〕
 しかし、一の2及び3記載の事実を総合して考えると、債権者と債務者との間の昭和五五年二月七日の合意は、東京営業所の販売成績を向上させることに債権者がその経験と手腕をもって貢献することを予定して締結されたものではあるが、一定の具体的な販売成績をあげることが債権者の勤務条件を債務者において維持する前提となっていたものではなく、また月額七五万五〇〇〇円の賃金の支払を受ける東京営業所長としての労働契約を主要な部分とし、常務取締役としての委任契約(その報酬についての定めはない)が付随的又は副次的な部分として併存する契約であると解するのが相当であって、労働契約の部分については、原則として、債権者の意思に反して一方的に不利益に変更することは許されないものというべきであって、前記の債務者の主張は、いずれも採用することができない。
 してみると、債務者の債権者に対する入社以後の対応は、東京営業所の販売成績が債権者の入社後も期待したようには向上しなかったことから、債権者の入社後約六か月後には早くも債権者に対する不信の念を抱き、販売成績が向上しなかった原因についての客観的な分析を十分にし、債権者との間で冷静に善後策を協議するといった方策を講じることのないまま、債権者一人にその責を負わせ、債権者の入社後約一五か月後には退職を迫るに至り、その後、入社時に合意した東京営業所長の地位を奪ったうえ、一方的に賃金を減額したものといわざるを得ない。
 (中略)
 また、債務者は、債権者に対して末端販売店の巡回セールス業務を命じた後に、債権者が債務者からの命令に違反して、月間販売目標及び成績不良理由書の提出をしなかったことを、本件解雇事由の一つとして主張しており、本件疎明資料によると、債務者は、債権者に対し、昭和五八年二月及び四月に、債権者において右の各書面を提出しなかったことを注意する旨の「注意書」と題する書面を交付したことが一応認められる。しかし、これらの注意書は、いずれも債権者と債務者との間において前記の雇用関係存在確認等請求の訴えが当庁に係属中に作成されたものであるばかりか、月間販売目標を提出させなければ債務者の業務に支障が生ずること及び債権者の成績が不良であることを認めるに足りる的確な疎明資料がないから、月間販売目標及び成績不良理由書の提出をしなかったことが前記一の1の(二)記載の就業規則に定める解雇理由に当たると判断することはできない。
 3 そうすると、本件解雇については、就業規則に定める解雇理由に当たる事実が存在することの疎明がないことに帰するから、本件解雇は無効であるといわなければならない。