全 情 報

ID番号 03097
事件名 退職金等請求控訴事件
いわゆる事件名 日新製鋼事件
争点
事案概要  会社がその従業員の退職にあたって退職金から自己の貸付金、銀行・労金からの借入金の残存金額の全額を控除して支払ったことにつき、右従業員の破産管財人が右退職金の全額の支払いを求めた事例。
参照法条 労働基準法24条
破産法72条
民事執行法152条
体系項目 賃金(民事) / 退職金 / 破産と退職金
裁判年月日 1987年9月29日
裁判所名 大阪高
裁判形式 判決
事件番号 昭和61年 (ネ) 798 
昭和62年 (ネ) 99 
裁判結果 一部認容・一部棄却
出典 タイムズ668号151頁/労経速報1303号7頁/労働判例507号53頁
審級関係 一審/04083/大阪地/昭61. 3.31/昭和59年(ワ)434号
評釈論文
判決理由 〔賃金-退職金-破産と退職金〕
 そして、退職金並びに八月分及び九月分の給与の各四分の三の請求権は民事執行法一五二条所定の債権であり、差押えが禁止されているから、破産財団に属さず、被控訴人は、その管理処分権を持たない。
(中略)
 前記合意相殺は、労基法二四条該当が問題になる分も含め全部有効であるところ、前説示から明かなとおり、各借入金に関する一括返済金の支払請求権ないし費用前払請求権は、借り入れの段階で、既に発生の要件が備わり退職により具体的内容が確定したということができ、また、共済会脱会餞別金、従業員預金解約金、住宅財形貯蓄解約金は退職に伴い発生したということができ、いずれも、前記Aの意思表示にかかわりなく発生したものであるから、控訴人は、右意思表示にかかわりなく、破産法九八条、九九条に従い、破産手続きによらず、相殺することができ、もとより同法七二条によって否認することはできない以上、本件において合意相殺をしたからといってこれを否認しうることにはならず(退職金等の請求権消滅の効果を直接もたらすものは控訴人の相殺の意思表示であり、ただそれだけでは労基法二四条によりその効果が発生しないため、Aのした意思表示により労基法二四条の制約を脱して所期の効果を発生させたというべきであるから、Aの意思表示を否認して労基法二四条の制約を復活させうるというのであれば格別、破産法上認められた否認権にそのような効力はない以上、本件合意相殺は同法九八条の相殺権の行使と同視しうるものであり、これを否認しえない。)、再抗弁は認められない。