全 情 報

ID番号 03114
事件名 損害賠償請求控訴
いわゆる事件名 布施自動車教習所事件
争点
事案概要  自動車教習所の代表取締役らが、労使間の対立に端を発して事業廃止決議をしたことにつき、経営上の必要にもとづくものであり取締役の善管義務および忠実義務違反にあたらないとして、不法行為の成立を否定した事例。
参照法条 民法643条
民法709条
体系項目 労基法の基本原則(民事) / 労働者 / 委任・請負と労働契約
労働契約(民事) / 労働契約上の権利義務 / 信義則上の義務・忠実義務
裁判年月日 1984年3月15日
裁判所名 大阪高
裁判形式 判決
事件番号 昭和57年 (ネ) 2447 
昭和57年 (ネ) 2462 
裁判結果 取消・棄却
出典 労働判例438号64頁
審級関係 一審/03208/大阪地/昭57.12.24/昭和53年(ワ)6132号
評釈論文
判決理由 〔労基法の基本原則-労働者-委任・請負と労働契約〕
〔労働契約-労働契約上の権利義務-信義則上の義務・忠実義務〕
 二 右認定事実によれば、教習生の入所受付停止、在籍教習生の転退校、事業所閉鎖等がA教習所の収入の途を閉すものであり、かつ被告らがA教習所の取締役として右措置に関与したことは明らかである。しかしながら、先に認定したとおり、A教習所は、労使間の対立激化による正常な教習業務継続の困難及び教習生や受講を希望する一般公衆に対する迷惑回避のため、取締役会の決議により昭和五二年一一月一日から教習生の入所受付を停止し、在籍教習生に転退校を勧める措置をとったが、その後も労使関係が改善せず、原告らから教習所資産の強制執行を受け、会社再建についても組合の協力を得られなかったゝめ、被告らは会社の経営に自信を喪失し、他への営業譲渡を試みたもののこれも組合の反対にあい、遂に事業所閉鎖の止むなきに至ったものであり、右のような本件の経過に鑑みると、入所受付停止等前記一連の措置は会社の経営管理上の必要と配慮からとられたものであって、それが専ら分会の組織破壊ないし組合活動の抑圧を目的とし、その手段としてなされたとは認めがたく、他に右措置が不法行為に当る違法な所為であると解すべき資料はなく、また被告らに取締役の会社に対する善管義務及び忠実義務に違反する任務懈怠があると認めることもできない。
 三 そうすると、その余の判断をなすまでもなく、被告らに対し、不法行為もしくは昭和五六年法律七四号による改正前の商法二六六条の三に基く損害賠償を求める原告らの本訴請求は、すべて失当として排斥を免れない。
 四 よって、原判決中被告ら敗訴の部分を取消し、原告らの本訴請求を棄却することとし、第一、二審の訴訟費用の負担につき民事訴訟法第九六条、第八九条、第九三条を適用して、主文のとおり判決する。