全 情 報

ID番号 03116
事件名 地位保全賃金仮払仮処分異議申立事件
いわゆる事件名 西日本電線事件
争点
事案概要  会社経営の悪化を理由とする整理解雇につき、その必要性は認められるが、解雇回避の努力を尽くしておらず、また組合との協議を尽くしていないとして無効とした事例。
参照法条 労働基準法2章
民法1条3項
体系項目 解雇(民事) / 整理解雇 / 整理解雇の要件
解雇(民事) / 整理解雇 / 整理解雇の必要性
解雇(民事) / 整理解雇 / 整理解雇の回避努力義務
解雇(民事) / 整理解雇 / 協議説得義務
裁判年月日 1984年4月25日
裁判所名 大分地
裁判形式 判決
事件番号 昭和57年 (モ) 758 
裁判結果 原決定認可
出典 労働判例434号49頁/労経速報1205号47頁
審級関係
評釈論文
判決理由 〔解雇-整理解雇-整理解雇の要件〕
 一 本件解雇は、会社がその経営の苦況を克服するため人員削減を必要とするために実施されたいわゆる整理解雇であるところ、整理解雇は、企業の経営苦況克服という一方的理由のために、労働者側が全く責むべき事情なしに企業から放逐され、生活の糧を得るべき従業員としての地位を失わしめるものであるから、これが有効とされるためには、信義則上次のような要件が必要であると解される。 すなわち、第一には、企業が客観的にみて経営危機に陥っていて、人員削減をしなければその存続が危ぶまれる状態にあること、第二には、出向、配転や希望退職者の募集等他の方法を講じて、整理解雇回避措置が尽くされていること、第三には、労働組合等労働者側に対し、客観的な事態の説明がなされ、人員削減の時期、規模、方法等について十分に協議がなされたこと、第四には、被解雇者の人選基準が合理的であって、具体的な適用も公平になされたこと、以上のように解される。
 したがって、これらの要件をみたさずに整理解雇がなされた場合には、解雇権の濫用としてこれを無効と解すべきである。
〔解雇-整理解雇-整理解雇の必要性〕
 前記第二の一、二で認定の事実によれば、会社は、昭和四九年度以降経営危機に陥り、経営改善の努力はしたものの、本件整理解雇時には多額の累積赤字をかかえるに至り、そのまま推移すれば会社の存続も危ぶまれる状態にあって、人員削減等の方法により抜本的な経営合理化の必要が生じていたものと一応認められる。
〔解雇-整理解雇-整理解雇の回避努力義務〕
〔解雇-整理解雇-協議説得義務〕
 しかるに、会社は、親会社ともいうべき三井金属の意向を酌んで人員問題の五月内決着を急ぐのあまり、整理解雇の実施については労組と何らの協議もすることなく、これを強行したものであるのみならず、残り三八名の減員の実施状況をみても、会社が昭和五六年五月三〇日の時点であえて三〇名の指名解雇に踏み切らなくとも、更に労組等との協議を尽し、再建案に基づく人員削減の完全実施に向けて、労組等の理解と協力を得ながら、事態を打開する余地はなお十分に残されていたということができるから、会社が本件指名解雇を回避するために必要にして十分な事前の措置を講じたとは必らずしもいえず、いずれの点からみても、会社が本件指名解雇前に前記信義則上の義務を履行したとはいい難いから、その余の点について判断するまでもなく、本件整理解雇を有効とすることはできず、結局、会社の抗弁は理由がないことに帰する。