全 情 報

ID番号 03123
事件名 賃金請求事件
いわゆる事件名 東京鉄道荷物事件
争点
事案概要  一九時間労働の「徹夜勤務」に対する賃金が八時間労働の賃金の二倍相当額で支払われているとしても、それは時間給ではなく一勤務に対する賃金であるとして、三時間の賃金請求が棄却された事例。
参照法条 労働基準法89条1項2号
体系項目 賃金(民事) / 賃金請求権の発生 / 賃金の計算方法
裁判年月日 1984年6月28日
裁判所名 東京地
裁判形式 判決
事件番号 昭和58年 (ワ) 7693 
裁判結果 棄却
出典 労経速報1201号11頁
審級関係
評釈論文
判決理由 〔賃金-賃金請求権の発生-賃金の計算方法〕
 被告会社は、鉄道荷物の受付業務の代行等を目的とする会社である。原告は、昭和五二年六月七日、小荷物の仕分けをするアルバイトとして期間一カ月の約定で被告会社に雇用され、汐留営業所に勤務していたが、期間経過後は右契約が更新された(原告が小荷物の仕分けをするアルバイトとして期間一カ月の約定で被告会社に雇用され、期間経過後は右契約が更新されたことは当事者間に争いがない)。被告会社には、汐留営業所で働くアルバイトの勤務形態として、日勤(午前九時から午後六時までの勤務)、夜勤(午後九時から翌日午前九時までの勤務)及び徹夜勤務(午前九時から翌日午前九時までの勤務)の三種類があり、原告は採用時に徹夜勤務を希望し、同勤務をするアルバイトとして採用された。原告は、まれに日勤勤務に就いたことがあるほかは、採用された昭和五二年六月七日から退職した昭和五八年五月二日まで徹夜勤務者として勤め、被告会社との契約で定められた徹夜勤務の場合の賃金を支給されていた。昭和五六年七月以降の各勤務形態に対応する勤務条件は、別紙三記載のとおりであった。
 右認定事実によれば、原告は当初から徹夜勤務のアルバイトとして採用され、その勤務形態は退職するまで一貫して徹夜勤務であったこと、賃金も被告会社との契約で定められている徹夜勤務の場合の賃金全額が支払われていたことが認められるから、被告会社の支払うべき未払い賃金は存しないというべきである。原告は、日勤の場合も夜勤の場合も、実働時間八時間で五三〇〇円であるから、徹夜勤務の場合も実働時間が一六時間で一万〇六〇〇円であるべきところ、徹夜勤務の場合の実働時間は一九時間であるから、徹夜勤務の場合には三時間分の労働に対する賃金が支払われていないことになるとして、このことを前提に本件請求をしているが、被告会社におけるアルバイトの賃金は各勤務形態ごとに定められており、いわゆる時間給ではないから、実労働一時間当りの賃金は勤務形態によって若干異るのであって、これがすべて同一でなければならない理由はないうえ、原告は徹夜勤務の場合の勤務条件を十分承知のうえで勤務を継続していたのであるから、原告の請求は、被告会社との間の契約で定められた賃金額を上まわる賃金の支払いを求めることに帰し、その前提において失当というべきである。