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ID番号 03160
事件名 損害賠償請求事件
いわゆる事件名 陸上自衛隊第三三一会計隊事件
争点
事案概要  自衛隊隊長の運転する車輌の事故により同乗の隊員が死亡した事故につき、運転者の当然負うべき注意義務違反であり、国には安全配慮義務違反はないとされた事例。
参照法条 労働基準法2章
民法415条
国家賠償法1条
体系項目 労働契約(民事) / 労働契約上の権利義務 / 安全配慮(保護)義務・使用者の責任
裁判年月日 1983年5月27日
裁判所名 最高二小
裁判形式 判決
事件番号 昭和55年 (オ) 579 
裁判結果 棄却
出典 民集37巻4号477頁/時報1079号41頁/タイムズ498号86頁/交通民集16巻3号605頁/金融商事1巻700号51頁/裁判所時報865号1頁/労働判例414号71頁/訟務月報29巻12号2226頁/裁判集民139号7頁
審級関係 控訴審/03243/東京高/昭55. 2.28/昭和53年(ネ)2348号
評釈論文 遠藤賢治・ジュリスト797号72頁/遠藤賢治・季刊実務民事法4号202頁/下森定・昭和58年度重要判例解説〔ジュリスト815号〕79頁/三上威彦・判例評論302号36頁/山本隆司・法律時報56巻5号152頁/藤村啓・昭和58年行政関係判例解説111頁
判決理由 〔労働契約-労働契約上の権利義務-安全配慮(保護)義務〕
 上告代理人口野昌三の上告理由第一点について国は、公務員に対し、国が公務遂行のために設置すべき場所、施設若しくは器具等の設置管理又は公務員が国若しくは上司の指示のもとに遂行する公務の管理に当たって、公務員の生命及び健康等を危険から保護するよう配慮すべき義務を負っている(最高裁昭和四八年(オ)第三八三号同五〇年二月二五日第三小法廷判決・民集二九巻二号一四三頁)。右義務は、国が公務遂行に当たって支配管理する人的及び物的環境から生じうべき危険の防止について信義則上負担するものであるから、国は、自衛隊員を自衛隊車両に公務の遂行として乗車させる場合には、右自衛隊員に対する安全配慮義務として、車両の整備を十全ならしめて車両自体から生ずべき危険を防止し、車両の運転者としてその任に適する技能を有する者を選任し、かつ、当該車両を運転する上で特に必要な安全上の注意を与えて車両の運行から生ずる危険を防止すべき義務を負うが、運転者において道路交通法その他の法令に基づいて当然に負うべきものとされる通常の注意義務は、右安全配慮義務の内容に含まれるものではなく、また、右安全配慮義務の履行補助者が右車両にみずから運転者として乗車する場合であっても、右履行補助者に運転者としての右のような運転上の注意義務違反があったからといって、国の安全配慮義務違反があったものとすることはできないものというべきである。
(中略)
 以上の事実関係によれば、本件事故は、A一尉が車両の運転者として、道路交通法上当然に負うべきものとされる通常の注意義務を怠ったことにより発生したものであることが明らかであって、他に国の安全配慮義務の不履行の点は認め難いから、国の安全配慮義務違反はないとした原審の判断は、正当として是認することができ、原判決に所論の違法はない。論旨は、採用することができない。