全 情 報

ID番号 03199
事件名 仮処分申請事件
いわゆる事件名 小谷医院事件
争点
事案概要  病院の事業縮小のため就業規則の「事業の縮小、その他やむを得ない事業上の都合による場合」にあたるとして解雇された者がその効力を争った事例。
参照法条 労働基準法2章
労働基準法89条1項3号
体系項目 解雇(民事) / 解雇事由 / 已ムコトヲ得サル事由(民法628条)
裁判年月日 1982年10月6日
裁判所名 鳥取地米子支
裁判形式 決定
事件番号 昭和57年 (ヨ) 23 
裁判結果 一部認容
出典 労働民例集33巻5号882頁
審級関係
評釈論文 香川孝三・ジュリスト820号102頁
判決理由 〔解雇-解雇事由-已ムコトヲ得サル事由(民法628条)〕
 およそ、事業を縮小するか否かは企業の専権に属する企業運営方針の策定であって、当該企業がこれを自由に行ない得るものというべきである。しかし、このことは企業が右決定の実施に伴い使用者として事業縮小による余剰労働者を自由に解雇することを当然に意味するものではない。右解雇は、終身継続的な雇用関係を期待する労働者を特段の責に帰すべき理由なく一方的に企業外に排除するもので、労働者の生活に深刻な影響を及ぼすものであることに鑑み、企業運営上の必要性を理由とする使用者の解雇の自由も一定の制約を受けることを免れないものというべきであり、債務者の債権者らに対してなした本件解雇の根拠となった従業員就業規則三二条五号に「事業の縮小、その他やむを得ない事業上の都合による場合」と規定されていることも債務者は右事由に該当する場合に解雇権を行使しうることを定めたものと解されるのであって、右に述べた事理を明文化したものということができる。そして、解雇が右就業規則にいう「事業の縮小、その他やむを得ない事業上の都合による場合」に該当するか否かは、債務者及び労働者側の具体的実情を総合して解雇権の行使にやむを得ない客観的、合理的理由が存するか否かに帰するものであり、この見地に立って考察すると、債務者が事業の縮小に伴いその従業員を解雇するについて、「やむを得ない事業の都合」によるものと言い得るたるには、第一に、右事業の縮小が債務者の病院経営の合理的運営上やむを得ない必要に基づくものであること、第二に、解雇に先立ち、退職者の募集、出向、配置転換その他余剰労働力吸収のための解雇回避努力がなされたこと、第三に、具体的な解雇対象者の選定が客観的、合理的基準に基づくものであることの三要件を充足することを要すると解するのが相当である。