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ID番号 03221
事件名 分限免職処分取消請求
いわゆる事件名 防衛庁技官事件
争点
事案概要  防衛庁技官に対する勤務成績不良、職務不適格を理由とする分限免職処分が適切とされ、退職勧奨拒否を理由とするものではないとされた事例。
参照法条 労働基準法2章
自衛隊法42条
体系項目 解雇(民事) / 解雇事由 / 勤務成績不良・勤務態度
解雇(民事) / 解雇事由 / 職務能力・技量
退職 / 退職勧奨
解雇(民事) / 解雇権の濫用
裁判年月日 1981年3月27日
裁判所名 東京地
裁判形式 判決
事件番号 昭和53年 (行ウ) 74 
裁判結果 棄却
出典 労働判例363号31頁
審級関係
評釈論文
判決理由 〔解雇-解雇事由-勤務成績不良・勤務態度〕
〔解雇-解雇事由-職務能力・技量〕
 2 以上の認定事実から考えるに、原告は、土浦場長当時以来、職務遂行に対して熱意に欠け、管理能力について極めて低い評価しか受け得ず、技術指導、研究の分野においても殆ど実績を上げることなく推移したものであり、評価委員会、業務計画検討会議における討議に際しても、会議そのものに対する批判、上司に対する個人攻撃的な発言に終始し、建設的な議論への参加はみられなかったことが認められる。また、上司の業務上の命令にも素直に従うことなく、一研付時代においては、一研長から付与された研究課題の担当(当時においては、唯一の職務であったが)を一旦は拒否したうえ、再度の担当命令により、これに対する報告書を提出したものの、その内容は、前記のとおり、極めて簡略、杜撰で、個人攻撃的な事がらを主内容としたもので、研究課題付与の趣旨を逸脱したものとみられてもやむを得ないものであり、これに対する一研長の、再度報告書を提出し直すようにとの要請にも応じなかった。さらに、自発的に希望する研究テーマを申出る等のこともなく、特に、一研付を発令された昭和四九年一月一六日以降は勤務実績が皆無といえる。
 原告は、また、一研主任研究官兼技術部付を発令された昭和四一年六月一日以降、自室において勤務時間の大部分をラジオの英語放送を聞いたり、新聞、雑誌を読んだりして過ごしていたものであり、その勤務態度は、真剣に職務を遂行しようとする熱意を全く欠き、むしろ投げやり的なものであったと言わざるを得ない。以上からすると、原告の勤務成績は極めて不良な状況にあったことが認められる。
 また、前記認定事実、特に土浦場長当時の勤務態度、評価会議及び業務計画検討会議における原告の言動、研究課題付与に対する応対、右課題に対する報告書の内容、退職勧奨に対する原告の応対等から考えるに、原告は自我主張が極めて強く、上司の命に従順でなく、同僚、部下との協調性に欠け、特に人事についての不満が極めて強く、技術部長や所長になっている者は技術的な能力が劣るのに、要領が良いために登用されたものであり、自分もかような指定職に登用されるべきであるのに不当に冷遇されているとの考えに固執し、上司に対する個人攻撃にのみ急で、自己の職務を遂行することに熱意を持たず、そのため前記のような不良な勤務態度を惹起したものと考えられる。すなわち、原告の右記の如き性格的なものに基因して、その職務の円滑な遂行が妨げられていると認められるのであり、したがって原告は、その職務に必要な適格性をも欠くものと言わざるを得ない。
〔退職-退職勧奨〕
 原告は、また、原告が退職勧奨に応じなかったために免職処分に付されたものであると主張する。そこで検討するに、前記のとおり、原告に対しては、昭和四七年九月頃から退職勧奨が行われ、昭和四九年一月一六日付で退職準備の意味を持たせた一研付が発令され、その後もしばしば勧奨が行われたが、原告はこれを拒否していたところ、昭和五〇年末頃からは、勧奨に応じねば分限免職にもなし得る旨の発言が技本本部長等からなされ、結局、原告は本件免職処分に付された事実が認めらる。しかし、(人証略)によると、技本としては、原告の従前からの勤務態度不良、特に研究課題担当命令に際しての原告の応答、提出された報告書の内容に照らして分限免職処分が相当であると考えるに至ったが、原告が勧奨に応じて退職すれば最も円満な解決が図れるとの考慮のもとに、退職勧奨を続行していたところ、結局、原告がこれに応じなかったために、やむなく本件免職処分に付したものであることが認められるから、この点に関する原告の主張も理由がない。
〔解雇-解雇権の濫用〕
 二 以上のとおりであるから、原告は、勤務成績不良で、かつ、その職務に必要な適格性をも欠くものと認められ、その内容、程度に照らすと、被告が、自衛隊法四二条一号、三号を適用して行った本件免職処分は相当なものであったといえ、その他に、被告が本件処分を行うに当って、裁量権限を濫用したことを窺うに足りる事情も認められない。