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ID番号 03243
事件名 損害賠償請求控訴事件/同附帯控訴事件
いわゆる事件名 陸上自衛隊会計隊長事件
争点
事案概要  陸上自衛隊会計隊長の自動車事故により同乗の自衛隊員が死亡した事故につき、履行補助者の義務違反とはいえないとして、国に安全配慮義務違反はなかったとした事例。
参照法条 労働基準法2章
民法1条
民法415条
体系項目 労働契約(民事) / 労働契約上の権利義務 / 安全配慮(保護)義務・使用者の責任
裁判年月日 1980年2月28日
裁判所名 東京高
裁判形式 判決
事件番号 昭和53年 (ネ) 2348 
昭和54年 (ネ) 541 
裁判結果 破棄・自判(上告)
出典 時報961号75頁/東高民時報31巻2号29頁/タイムズ414号66頁/訟務月報26巻5号738頁
審級関係 上告審/03160/最高二小/昭58. 5.27/昭和55年(オ)579号
評釈論文 遠藤きみ・法律のひろば33巻5号75頁/藤村啓・昭和55年行政関係判例解説152頁/富井利安・判例評論271号22頁
判決理由 〔労働契約-労働契約上の権利義務-安全配慮(保護)義務〕
 安全配慮義務は、国が公務遂行に関する人的、物的諸条件を支配管理する権限を有することに由来する義務であり、管理権の発動として実行されるものであるから、国の安全配慮義務の履行補助者が公務の執行としての自動車の運行に関して負つている注意義務は、自動車運転者が右のような管理権とは無関係に道路交通法その他の法令に基いて運転上負つている注意義務とは、その性質、法的根拠及び内容を異にするのであつて、その者に運転者としての過失があつたことから、直ちに国の安全配慮義務の面でも履行補助者として義務違反があつたと結論づけ得ないことはいうまでもない。前認定のA一尉の過失は、同人が国の安全配慮義務につき履行補助者の地位にあることとは全く無関係の、すなわち、同人が国の履行補助者として公務につき有していた前記管理権とは無関係の運転上の注意義務を怠つたことによるものである。この点に関連して、仮りに、亡Bが訓練のため車両を運転し、A一尉が傍らで指導教育に当たつていたとした場合との権衡を考えるとしても、既に運転免許を取得している亡Bが自動車運転者としての注意義務を遵守するであろうことは、格別の事情がない限りその監督者においても一応信頼してよいことであるから、前記道路状況のもとで亡Bが急加速を行つて車両を滑走させ事故を招来する危険があることをA一尉において予測すべき義務があつたとはいえず、また、前記のごとき突発的な事故の状況に鑑み、危険防止のためA一尉において予め亡Bに対し何らかの指示を与え本件事故を防止し得たとする時間的余裕もなかつたといわざるを得ないから、本件について、亡Bが運転していた場合との権衡論を根拠としてA一尉の安全配慮義務違反を肯定することは適切でない。