全 情 報

ID番号 03284
事件名 損害賠償請求事件
いわゆる事件名 陸上自衛隊一〇二輸送大隊事件
争点
事案概要  トラックの操縦訓練教育を受けていた自衛隊員の運転ミスにより同乗していた自衛隊員が死亡した事故につき、指導担当者に運転指導上の安全配慮義務違反があったとして国に損害賠償の支払いを命じた事例。
参照法条 民法416条
労働基準法2章
体系項目 労働契約(民事) / 労働契約上の権利義務 / 安全配慮(保護)義務・使用者の責任
裁判年月日 1979年3月6日
裁判所名 東京地
裁判形式 判決
事件番号 昭和50年 (ワ) 4403 
裁判結果 (控訴)
出典 訟務月報25巻7号1730頁
審級関係 控訴審/東京高/   .  ./昭和54年(ネ)672号
評釈論文
判決理由 〔労働契約-労働契約上の権利義務-安全配慮(保護)義務〕
 本件事故当時のような天候、路面状態下において、追越しの経験に乏しいA二士が、民間車の追越しを終えて、対向車を避けるため自車線に戻るに際し、本件のようにハンドルを急に切るという挙動に出るおそれは十分にあったものと認めるのが相当であり、B士長は右の事態を容易に予測しえたものというべく、したがって、このような場合、B士長としては、A二士が民間車の追越しを開始するに際し、自車線に戻るときハンドルを急に切らないよう同人に注意を与えるとともに、対向車線に進入した際、対向車との距離、A二士の前記ハンドル操作上の欠点、路面状態等を考慮し、かつ、民間車との速度関係を考えて、前記制限速度内で加速して速やかに同車を追い越すか、又は追越しを一時断念し、自車線に復帰する等安全を保持するための適切な指示をすべき義務(なお、叙上のような適切な指示、指導をすることは、まさに本件車両操縦訓練の趣旨、目的から教官等の職務というべきである。)があるにかかわらず、これを怠り(A二士が本件事故当時既に大型第一種自動車免許を取得していたから、本件の場合B士長には叙上の義務がないとの被告の主張は、前示本件車両操縦訓練の趣旨に照らし、到底採用するに由ないものといわざるをえない。)、右のいずれの措置をもとることなく放任していた結果、A二士が運転に際し潜在的に有していたハンドル操作上の欠点による危険性を顕現させたものと断ぜざるをえない。
 してみれば、本件事故は、被告が、亡Cに対する安全配慮義務を怠った結果発生したものということができるから、被告は、亡Cの死亡による損害を賠償すべき責任がある。