全 情 報

ID番号 03303
事件名 従業員地位保全仮処分申請事件
いわゆる事件名 山崎技研事件
争点
事案概要  整理解雇につき、解雇の必要性はあるが、一名については所属組合との協議が尽されていないことを理由に無効とされ、他の一名については併存する他の所属組合との協議を尽しており、人選にも合理性があるとして有効とされた事例。
参照法条 労働基準法2章
民法1条3項
体系項目 解雇(民事) / 整理解雇 / 整理解雇基準・被解雇者選定の合理性
解雇(民事) / 整理解雇 / 協議説得義務
裁判年月日 1979年5月31日
裁判所名 高知地
裁判形式 判決
事件番号 昭和51年 (ヨ) 73 
裁判結果 一部認容
出典 労働判例325号31頁/労経速報1028号11頁
審級関係
評釈論文
判決理由 〔解雇-整理解雇-協議説得義務〕
 もっとも、前掲証拠によれば、被申請人は、労働条件の協約、各年度賃金増額及び各期一時金の支給額等についての団体交渉は、はじめに従組と行い、同組合との間で合意がなされた後、一般労組と団体交渉を行い、従組と妥結した結論をもって一般労組とも妥結していたこと及び被申請会社従業員のうち大多数が従組に属し、一般労組には二名という少人数であったことが認められるから、被申請人がまず従組と協議を行ったこと自体には問題はないけれども、一般労組に対しても結果としてその了解や同意が得られないことはあり得るとしても、少なくとも従組に対して行なった程度の協議をつくすべき義務があったというべきである。
 本件のような整理解雇の場合は、労働者の責に帰すべからざる事由によってその地位を失わしめるのであるから、企業者自ら解雇を回避すべき経営上の努力をすることはもちろん、それにもかかわらず解雇が避けられない場合は、従業員に対し会社のおかれている実情を含めた解雇のやむない事情とその規模、退職の条件等について十分説明して協議を尽くし、従業員の納得のいく手続上の努力をすべきことが信義則上要請され、使用者がその義務を尽くさず従業員を解雇した場合はその解雇は無効であると解される。そして、被申請人の申請人X1に対する解雇は右の義務に違反していると判断されるから、その余の点について検討するまでもなく、同申請人について解雇の正当性を主張する被申請人の抗弁は理由がない。
〔解雇-整理解雇-整理解雇基準〕
 以上の事実によれば、被申請人のたてた整理基準は合理的なものであると考えられるし、申請人X2は、前記のとおり同僚二名に比し、その技倆及び経験が必ずしも優っていないのであるから被申請人において申請人X2を整理解雇の対象としたとしても不当、違法であるとは言えず、同申請人に対する解雇はやむを得ないものと判断される。