全 情 報

ID番号 03326
事件名 仮処分異議事件
いわゆる事件名 鶴菱運輸事件
争点
事案概要  職安法四五条にもとづいて行なわれる労働者供給事業によって生ずる労働者と供給先との反覆継続した法律関係の終了につき、解雇法理を類推することはできず、供給労働者が労働組合を脱退した日をもって右法律関係が終了したものとされた事例。
参照法条 職業安定法45条
労働基準法2章
体系項目 労基法の基本原則(民事) / 労働者 / 供給労働者
裁判年月日 1979年12月21日
裁判所名 横浜地
裁判形式 判決
事件番号 昭和51年 (モ) 797 
裁判結果 取消
出典 労働民例集30巻6号1321頁/時報962号121頁/タイムズ404号110頁/労働判例333号30頁/労経速報1038号11頁
審級関係
評釈論文 近藤昭雄・労働判例348号4頁/近藤昭雄・労働判例349号4頁
判決理由 〔労基法の基本原則-労働者-供給労働者〕
 2 右事実によれば、新運転による労供事業においては、新運転所属の組合員でなければ供給の対象とならず、かつ、新運転による供給がなければ被申請人磯子出張所における就労はなく、被申請人においても、右の供給によってのみ新運転所属組合員を使用しうるものであり、また、新運転からの勤務票(就労票)による日々の供給とその継続の存するかぎりにおいて右の就労、使用の関係が存続していた事実が認められ、したがって、供給によって生ずる供給先(被申請人)と供給を受ける者(申請人ら組合員)との法律関係は、新運転による供給のあるかぎりにおいて成立する使用関係(就労に対し賃金が支払われる意味において雇用関係と解しても差し支えないが、供給の存するかぎりにおいて存続する特殊な雇用関係である。)であるものと認めるのが相当である。そして、被申請人及び組合員であった申請人ら双方において、このような新運転による労供事業の実態、仕組み等を十分知悉していたものであることは前認定の経過から明らかであり、したがって、供給後の当事者間の法律関係が前記のように供給の存するかぎりにおいて存続する使用関係であることを了承のうえ、これに従う意思で相互に就労、使用していたものと認めるのが相当であり、右当事者間に、一たん供給がなされた後は新運転の供給と離れて別個の雇用関係が成立し、これに基づいて就労、使用する意思があったものとみることは到底できない。
 3 しかして、一般に、労供事業による労働者の供給は、「供給契約に基づいて労働者を他人に使用させることをいう」(職業安定法五条六項)のであるから、同条の法意に照らせば、供給によって使用関係が成立すると共に、供給の継続によって使用関係をも存続させるものと解されるので、これと前記認定の事実を考え合わせると、新運転による労供事業においては、供給が打切られれば、被申請人と申請人らとの使用関係も当然終了することになるものと解するのが相当である。
 4 したがって、被申請人と申請人らとの間の使用関係は、申請人らが新運転を脱退し労働者供給の対象外となった日をもって終了したものと認めるのが相当である(なお、前掲乙第一号証、第三号証の一、第三四号証によれば、被申請人において、昭和五一年三月八日に申請人らが新運転から供給されないことが確定的であることを知ったため、翌九日から申請人らの就労を拒否したものであることが一応認められる。)。