全 情 報

ID番号 03327
事件名 従業員地位確認等請求事件
いわゆる事件名 湯浅電池事件
争点
事案概要  会社診療所の看護婦に対する医師の指示に従わない行為を理由とする諭旨解雇が有効とされた事例。
参照法条 労働基準法89条1項9号
民法1条3項
体系項目 懲戒・懲戒解雇 / 懲戒権の濫用
懲戒・懲戒解雇 / 懲戒事由 / 業務命令拒否・違反
裁判年月日 1979年12月24日
裁判所名 大阪地
裁判形式 判決
事件番号 昭和49年 (ワ) 4489 
裁判結果 棄却
出典 労働判例334号21頁/労経速報1040号10頁
審級関係
評釈論文
判決理由 〔懲戒・懲戒解雇-懲戒事由-業務命令拒否・違反〕
 そうすると、前記認定にかかる処分理由(一)、(二)、(四)、(五)、(七)、(九)の各事実は、賞罰規程一〇条七号所定の懲戒理由に該当するものというべきであり、右処分理由の各事実自体職場秩序を乱すことは明らかであるところ、加えて前記(二2)認定事実から明らかなごとく、原告は、A所長、B所長らの度重なる助言、指導にも拘らず、自らの非を自覚することなく、また、職場という団体生活の場において自ら協調性を発揮しようとする姿勢に欠けるものというべきであるから、右規程同条号但書所定の場合には該当しないものといわざるを得ず、よって、被告が原告に対し、同条号所定の諭旨解雇の処分をしたことは理由があるといわなければならない。
〔懲戒・懲戒解雇-懲戒権の濫用〕
 原告の勤務する被告会社の診療所は、多数の従業員の生命、身体の安全にかかわる医療行為等をなす場所であって、それ故に秩序正しい、安定した職場であることを要するものといわなければならない。しかるに、前記認定事実から明らかなように、原告は、本社診療所及び城西診療所を通じて、A所長、B所長らの助言、指導を受けながら、同所長らの指示に従わず、職場の秩序を乱し、又は乱そうとする行為を行なったものであり、その責任は、ひとえに原告自身にあるということができる。そして、このような原告の行動は、右診療所が少人数の人間によって構成されるところであるだけに、職場の秩序を乱し、もって職務の遂行を阻害するに至ること明白といわなければならない。
 原告は、原告の右のような行動の原因が管理者である診療所長の管理能力の欠如ないしは低劣さにあると主張するのであるが、A、B両診療所長の管理能力の有無が原告の右行動を生ぜしめたものでないことは、前記認定事実から明らかという外ないし、また、自らの行動の原因を他に転嫁するともいうべき原告の姿勢自体厳に慎しむべきものである。
 さらに、被告は、原告を解雇処分に付するにあたり、懲戒処分を避けるべく原告の申し出により長期にわたりその発令を猶予しているのであり、また、最も重い懲戒解雇とするのではなく、退職金、年末賞与金を支給したうえ、諭旨解雇としているのである。
 右のような諸点を総合すると、本件諭旨解雇は、何ら過大な処分ということはできないのである。
 そうすると、原告の解雇権濫用の主張は理由がなく、採用することができない。