全 情 報

ID番号 03355
事件名 地位保全仮処分申請控訴事件
いわゆる事件名 寿建築研究所事件
争点
事案概要  建築設計業務に従事していた職員が、副所長の写図の命令に反抗的態度をとった、設計室長に対し暴言をはくなどの反抗的態度をとったことを理由として解雇された(第一次解雇)ことに対して、これを不当解雇であるとして自己の加盟する建設関連産業労働組合の支援をえて解雇撤回闘争を行った際に暴力行使や各種のいやがらせがあったとして改めて解雇された(第二次解雇)ケースで、右一次、二次の解雇の効力が争われた事例。
参照法条 労働基準法2章
労働基準法89条1項3号
民法1条3項
体系項目 解雇(民事) / 解雇事由 / 就業規則所定の解雇事由の意義
解雇(民事) / 解雇事由 / 業務妨害
裁判年月日 1978年6月20日
裁判所名 東京高
裁判形式 判決
事件番号 昭和49年 (ネ) 3000 
裁判結果 一部変更(確定)
出典 時報902号114頁/タイムズ372号124頁/労経速報999号17頁/労働判例309号50頁
審級関係 一審/03547/東京地/昭49.12. 9/昭和47年(ヨ)2348号
評釈論文
判決理由 〔解雇-解雇事由-就業規則所定の解雇事由の意義〕
 被控訴会社の就業規則三〇条が解雇理由として、「【1】精神若しくは身体に障害があるとき、又は傷病のため勤務に堪えないとき。【2】業務に誠意なく技能不良なるもの。【3】会社の命令に反し、業務遂行上支障を生ずる行為をしたるとき。」と規定していること(この点は、成立に争いのない疎甲第二号証によって疎明される。)に徴すれば、被控訴会社は、右の就業規則を制定することによって自ら解雇権の行使を就業規則所定の理由がある場合にのみ限定したものであり、したがって、その何れの場合にも該当しないことを理由としてなされた解雇は、たとえ民法六二七条等所定の解雇事由が存する場合においても、無効であると解すべきである。
 (中略)
 控訴人の度重なる被控訴会社事務所への立入りと会社職制に対する数々の暴行、業務妨害等の行為は、被控訴会社の就業規則三〇条三号所定の解雇理由たる「会社の命令に反し、業務遂行上支障を生ずる行為をした」ものに該当するといわざるを得ない。もっとも、これらの行為は、すべて一次解雇後になされたものであり、その間、被控訴会社が一次解雇は有効であるとして控訴人の就労を拒否してきたことは、いうまでもない。しかし、右就業規則の規定は、多分に、職場秩序を維持するための懲罰的性質を有するものであるから、単に就労を前提とする業務命令に違反した場合のみならず、就労を前提とすることなく専ら職場秩序の維持を目的とする命令に違反した場合をも含むものと解するのが相当である。したがって、予備的解雇の理由となった前記各行為が一次解雇後に生じたものであるという事実は、予備的解雇に対して右就業規則の規定を適用することの妨げとはならない。
 それ故、予備的解雇は、有効であり、控訴人は、予備的解雇により昭和四八年五月七日をもって被控訴会社の従業員たる地位を失なったものといわなければならない。