全 情 報

ID番号 03413
事件名 雇用関係存在確認等請求事件
いわゆる事件名 第一生命保険相互会社事件
争点
事案概要  非違行為のあった従業員に対し、懲戒処分に付するための調査の期間、自宅待機を命じた場合につき、使用者はその間の賃金および夏期臨時手当の支払義務があるとされた事例。
参照法条 民法623条
労働基準法24条
体系項目 賃金(民事) / 賃金請求権の発生 / 仕事の不賦与と賃金
裁判年月日 1977年9月28日
裁判所名 東京地
裁判形式 判決
事件番号 昭和49年 (ワ) 9689 
裁判結果 一部認容・棄却(控訴)
出典 労働民例集28巻5・6合併号437頁
審級関係
評釈論文 中嶋士元也・ジュリスト685号124頁
判決理由 〔賃金-賃金請求権の発生-仕事の不賦与と賃金〕
 原告は昭和四九年五月四日被告より自宅勤務を命ぜられ、以降それに従つて支部長としての現実の勤務はしていなかつたことが当事者間に争いがないので、まずその性質につき考えると、弁論の全趣旨によれば、右命令は要するに、原告の非違行為の内容が被告にとつて明らかになつておらず、従つてこれに対する懲戒処分を決定しえない段階において、その調査を全うする目的で、かつその嫌疑のある原告をそのまま支部長として職務遂行させるのが相当でないとの配慮から、発したものであるが、就業規則その他に根拠を有する不利益処分としてなされたわけではなく、また原告に対し、これによりその問正常に勤務しなかつたこととなり給与その他の点で一定の不利益を受けるべきことを告知したものでもないし、現に同年六月三〇日までは原告に対し正常に勤務したものとしての給与が支払われたものと認められる。してみると、その原告は事後的にみれば原告の前示非違行為にあつたにせよ、右命令が発せられた時点におけるその性質を考えるときは、被告の都合に基づき、自宅勤務(待機)することをもつて原告の提供すべき労務とする旨の職務命令たるを出ないと解するのが相当であり、従つて原告は右命令に従つて自宅勤務している間も、労働契約上は正常に勤務したものとして取扱われるものというべきである。
 そうすると、原告は被告に対し同年七月一日から同月一九日までの給与請求権を有するものというべく、当時の原告の給与月額が二一万円で当月分を当月二三日に支払う約束であつたことは当事者間に争いがないから、その金額は次の算式のとおり一二万八七一〇円と算定すべきである。
 二一万円÷三一×一九=一二万八七一〇円(円未満四捨五入)
 次に、同年五月末日現在支部長として在籍し、同年七月一日現在まで引続き正常に勤務している者に対しては、右七月一日を支給時として夏期臨時手当が支給されることになつていたことは当事者間に争いがなく、右自宅勤務につき判断したところによれば、原告は右受給資格を有するものと認めるべく、その場合に原告に支給されるべき額が六八万三三六四円を下らないことは当事者間に争いがない。