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ID番号 03458
事件名 懲戒処分取消請求控訴事件
いわゆる事件名 北九州市病院局事件
争点
事案概要  市立病院職員である地方公務員がベトナム反戦等を目的とする集会に参加し公務執行妨害罪等により逮捕、勾留、起訴されたため二〇日間欠勤したことを理由としてなされた懲戒免職処分の効力が争われた事例。
参照法条 地方公務員法29条
体系項目 懲戒・懲戒解雇 / 懲戒事由 / 職務外非行
裁判年月日 1976年10月27日
裁判所名 福岡高
裁判形式 判決
事件番号 昭和50年 (行コ) 8 
裁判結果 (確定)
出典 労働民例集27巻5号562頁/時報839号113頁/訟務月報22巻11号2582頁
審級関係 一審/福岡地/昭50. 6.30/昭和45年(行ウ)51号
評釈論文
判決理由 〔懲戒・懲戒解雇-懲戒事由-職務外非行〕
 地方公務員法第二九条は懲戒処分として戒告、減給、停職、免職の四種を挙げ懲戒の手続および効果は条例によつて定めることを規定しているが、処分基準については何ら規定がない。このように画一的な処分基準を欠くことは懲戒権者が当該職員に対し前記処分をなす場合広範な諸般の事情を総合的に判断し、最も適切な処分をなすことを法が要請しているからにほかならない。従って懲戒権者が懲戒権を発動するかどうか懲戒処分のうち、いずれの処分を選択するかは懲戒権者の裁量によるべきであるが、前記各処分には軽重の差があるので最も適切な処分が選択されるべく、それは懲戒処分を定めた法条の趣旨に副う一定の客観的標準に照らして決せられるべきで、社会通念に照らしても合理性を欠くものであつてはならない。
 特に懲戒免職は他の処分と異なり、当該職員につきその職員たる地位を失わしめるものであるから、処分の選択に当つては他の処分の選択に比して一層慎重になさるべきことはいうまでもない。
 (中略) 同人は地方公務員であるから全体の奉仕者として公共の利益のため勤務しなければならず、そのためには公務員はその職の信用を傷つけ、又職員の職全体の不名誉となるような行為をしてはならないのに被控訴人の前記所為は職場外でなされた職務遂行に関係のないものとはいえ、その動機、目的が如何であろうとも極めて反社会的な集団過激的行動であつて、被控訴人はこれに参加し、行動を共にして逮捕勾留されたのであるから、これは著しく不都合な行為で、地方公務員としての社会的評価を低下毀損するものというべく、一般住民の批判を招くものであることが容易に推察されるものである。従つて、被控訴人が病院の一介の事務員にすぎず、同人の前記所為が破廉恥罪とか涜職罪というものでなかつたにせよ、そのことをもつて前記認定を覆えすに足りない。
 以上諸般の事情を判断し、更に免職処分を選択するについては特別に慎重な配慮を要することを勘案しても、控訴人が被控訴人に対し同人の前記所為につき懲戒免職処分をしたことは有効というべく、合理性を欠くとも裁量を越えた違法なものと解することもできない。