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ID番号 03533
事件名 地位確認等請求控訴事件
いわゆる事件名 国鉄鹿ノ谷駅事件
争点
事案概要  国労のストライキのピケ要員として参加するため上司の承認を得ずに早退したことを理由とする減給処分につき、上司が右承認義務を負う労働慣行か存するともいえず正当とされた事例。
参照法条 労働基準法2章
労働基準法89条1項9号
体系項目 労働契約(民事) / 労働契約上の権利義務 / 労働慣行・労使慣行
懲戒・懲戒解雇 / 懲戒事由 / 職場離脱
裁判年月日 1974年8月28日
裁判所名 札幌高
裁判形式 判決
事件番号 昭和48年 (ネ) 154 
裁判結果 原判決変更(確定)
出典 時報764号98頁
審級関係 一審/札幌地/昭48. 5.25/昭和44年(ワ)1238号
評釈論文
判決理由 〔懲戒・懲戒解雇-懲戒事由-職場離脱〕
 (三) 右認定等の事実によれば、控訴人の就業規則(五条、一二条)には、控訴人の職員が早退してその執務場所を離れ、欠務する場合においてはその所属長の承認をうけるべきである旨定められているところ、右(二)に訂正のうえ引用した原審認定のとおり、控訴人の職員である被控訴人らは、その所属上司の承認をうけないで早退し勤務中その執務場所を離れ、欠務したものであるから、被控訴人らは、右就業規則の定めに違反して、少なくとも同就業規則六六条六号(故なく職場を離れ又は職務につかないとき)所定の懲戒事由に該当する行為をなしたことが認められ、したがって、これは日本国有鉄道法三一条に規定する懲戒事由に該当するものといわなければならない。
〔労働契約-労働契約上の権利義務-労働慣行〕
 (四) ところで、被控訴人らは、前記引用にかかる原判決事実摘示の原告らの主張「(労働慣行の存在)1ないし3」に記載の理由(原判決八枚目裏一三行目から同九枚目裏八行目まで)を掲げて、控訴人の被控訴人らに対する本件減給処分が無効である旨主張する。
 成程、被控訴人らが当時就労していたその職務場所である鹿ノ谷駅においては、従来、職員が、その後務者等に勤務の交替を依頼したうえ、その所属上司に早退又は勤務中の外出の承認を申し出た場合、右上司から特に右早退又は外出を必要とする具体的理由を問われることなくこれが承認を得ていた事例があったことは前記(二)に訂正のうえ引用した原審認定のとおりである。しかし、更に右認定事実によれば、控訴人の就業規則には、控訴人の職員が早退又は勤務中に外出する場合は、その所属上司に対し必要理由を届出てこれが承認を受けるべきである旨明記されているところ、前記鹿ノ谷駅は、小人数の職員によって構成された控訴人の単なる末端営業現場にすぎないものと推認できるので、同駅の管理者である駅長又は助役に右就業規則を改廃、あるいはその効力を減退させる定めをなしうる権限があるものとは到底認めがたく、また、右鹿ノ谷駅の如き小規模の駅の上司としては、直接又は間接的にその所属職員の日常の動静を一応把握できるものと考えられるので、右鹿ノ谷駅の上司もその職員の日常の動静を把握し、同人から早退等の理由を告知させるまでもなくこれが許否の判断をなし得たため、殊更厳格に右理由を問わず早退等につき承認を与えていたものと推認できないでもないこと、更に、従来においても、同駅の職員が前記申出による早退等をなす場合は、あくまでもその所属上司の承認を求め、これを得て実行していたものであるから、過去に前記事例があったことをとらえて、この場合にかぎって、職員とその上司間に、右承認が不要、あるいはこれが形式的な措置であるとの認識のもとに早退等がなされていたと認めるのはいささか早計にすぎることなどを考え合すと、被控訴人ら主張の如く鹿ノ谷駅所属職員において、前記申出による早退等についてその上司が当然これが承認をなすべき義務を負う労働慣行上の権利を有すると断定することは困難である。そうすると、右労働慣行上の権利の存在を前提として本件減給処分が無効である旨の被控訴人らの主張は採用しがたい。