全 情 報

ID番号 03541
事件名 免職処分取消請求控訴事件
いわゆる事件名 京都府土木工営所事件
争点
事案概要  京都府の土木工営所に勤務する事務職員が職員互助会主催のリクリエーションの帰り途で 飲酒運転により人身事故を起こし罰金五万円に処せられたとして懲戒免職処分に付された事件でその効力が争われた事例。
参照法条 地方公務員法29条1項
体系項目 懲戒・懲戒解雇 / 懲戒権の濫用
懲戒・懲戒解雇 / 懲戒事由 / 職務外非行
裁判年月日 1974年11月7日
裁判所名 大阪高
裁判形式 判決
事件番号 昭和48年 (行コ) 11 
裁判結果 控訴棄却(確定)
出典 時報771号82頁
審級関係 一審/京都地/昭48. 4.13/昭和46年(行ウ)14号
評釈論文
判決理由 〔懲戒・懲戒解雇-懲戒権の濫用〕
 地方公務員法第二九条は懲戒処分として戒告、減給、停職、免職の四種を挙げ、懲戒の手続及び効果は条例によって定むべきものとしているが、処分基準については、具体的事案に即してそれにふさわしい処分がなされるためには、処分権者による広範な諸事情の総合的考慮に待つことが適当であるとして、法的に画一的な基準を設定することを避けている。従って具体的事案に当り諸般の事情を考慮したうえどの処分を選択するのが相当であるかについては処分権者に裁量が認められているものと解すべきであるが、前記四種の処分には軽重の差異があるのであるから、処分の選択は当該行為にふさわしいものが定められるべきであって、その選択が恣意にわたることはもとより、当該行為と対比して著るしく均衡を失する等社会通念に照らして合理性を欠くものであってはならない。殊に免職は他の処分とは異なり職員たる地位自体を失わしめるものであるから、処分の選択に当っては、他の処分の選択に比し特に慎重を要するものというべきである。
〔懲戒・懲戒解雇-懲戒事由-職務外非行〕
 控訴人は通達を以て、飲酒運転により人身事故を生ぜしめた職員は懲戒免職に付するとの処分基準を設定したから、その基準に従った本件処分は正当であるという。しかし法が処分基準を法的に画一的に定めず、処分権者の裁量に委ねた所以は、前記のとおり具体的事案に応じて処分権者のなす総合的判断を尊重すべきものとしたからに外ならないのであるから、処分権者が行政上の必要から、懲戒処分の基準を設定していたとしても、それに従うことが処分を正当化するものではなく、あくまでも具体的事案に即してなされた処分が法の定める裁量に従った正当なものであることを要することはいうまでもない。従って処分基準に従ったから正当であるとか、処分基準に拘束され裁量の余地がない等の控訴人の主張は本末を誤ったもので採るに足らない。又懲戒権者が処分を選択するに当っては当該行為の外客観的、主観的な諸般の事情が考慮されねばならず、その一つとして行為者本人以外の一般職員に及ぼす警告的効果も含まれる。しかしながら、これを重視するの余り控訴人主張の処分基準により、その他の諸事情を何ら考慮に容れることなく本件処分を為すに至ったものであるとすれば勿論、諸事情を考慮したとしても、右の警告的効果を偏重したものであれば前記認定(原判決記載)諸事情の総合的考慮において、処分の選択につき裁量を誤った違法があるものといわねばならない。