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ID番号 03542
事件名 兼業許可請求事件
いわゆる事件名 瀬里奈事件
争点
事案概要  飲食店を経営する会社の就業規則が原則として従業員の兼業を禁じながら申出により許可する場合がある旨定めていたところ、勤務終了後約二時間他社でアルバイトをすることにつき兼業許可の意思表示を求める請求をした事例。
参照法条 労働基準法2章
体系項目 労働契約(民事) / 労働契約上の権利義務 / 労働義務の内容
裁判年月日 1974年11月7日
裁判所名 東京地
裁判形式 判決
事件番号 昭和49年 (ワ) 1 
裁判結果 認容(控訴)
出典 時報765号107頁
審級関係
評釈論文 奥山明良・ジュリスト606号125頁/角田邦重・労働判例214号23頁
判決理由 〔労働契約-労働契約上の権利義務-労働義務の内容〕
労働者は、雇用契約の締結によって使用者に対し一日のうち一定の限られた勤務時間のみ労務提供の義務を負担し、その義務の履行過程においてのみ使用者の支配に服するが、雇用契約及びこれに基づく労務の提供を離れて、使用者の一般的な支配に服するものではない。労働者は、勤務時間外を事業場の外で自由に利用することができ、他の会社に勤務するために余暇を利用することも、一般の雇用契約においては、原則として許されなければならない。ただ、労働者が兼業することによって使用者の企業機密の保持を全うし得なくなるなど経営秩序を乱したり、あるいは、労働者の使用者に対する労務の提供が不能若しくは不完全になるような場合もあり得る。そこで、このような場合においてのみ、例外として就業規則に兼業禁止規定を置くことが是認されるものと解するのが相当である。
 前記就業規則第一九条に定める兼業するについて「会社が真に事情やむを得ないと認めた場合」という兼業許可の要件は、兼業を必要とする労働者側の事情とこれを禁止すべき使用者側の事情とを右の趣旨に従って総合的に検討して決められるべきであるが、使用者の恣意的な判断を許すものでないことはいうまでもなく、使用者の経営秩序に影響がなく、また、労働者の使用者に対する労務の提供にも格別支障がないような場合には、使用者は、たとい労働者の兼業を必要とする度合いが少ないときでも、兼業許可請求を許可すべき義務を負うものと解せられる。