全 情 報

ID番号 03557
事件名 出勤停止処分無効確認請求事件/賃金請求事件
いわゆる事件名 日本ナショナル金銭登録機事件
争点
事案概要  使用者の敷地内である通用口内で組合ビラを配布したことを理由とする出勤停止処分が有効とされた事例。
参照法条 労働基準法89条1項9号
体系項目 懲戒・懲戒解雇 / 懲戒事由 / 違法争議行為・組合活動
裁判年月日 1973年2月9日
裁判所名 横浜地
裁判形式 判決
事件番号 昭和43年 (ワ) 1895 
裁判結果 棄却
出典 労働民例集24巻1~2合併号34頁/タイムズ294号375頁
審級関係 控訴審/01823/東京高/昭52. 7.14/昭和48年(ネ)304号
評釈論文 菊池高志・労働判例172号24頁
判決理由 〔懲戒・懲戒解雇-懲戒事由-違法争議行為・組合活動〕
 (二) 右認定事実によると、原告らの所属する支部の発行する「A」は、支部の活動方針、要求等を記載した機関紙というべきものであり、その発行自体は、組合の活動として当然に許されるものということができる。
 しかし右「A」が、被告会社工場内で配付されたこと前記認定のとおりであるところ、およそ企業の有する施設管理権は、企業がその企業目的に合致するようその施設を管理する権限であつて、単に物的管理権のみを指称するものではないというべきであり、したがつて組合に対する関係においても、その組合の活動が、使用者の建物、敷地等を利用して行なう場合には、使用者の施設管理権に基づき、使用者の意思に反して活動することはできず、このことは特段の事情のない限り、休憩時間中あるいは就業時間外のものであつても変わるところはないといわなければならない。
 これを本件についてみると、前記のとおり、大磯工場においては、昭和四〇年四月一二日以前は同工場入口においてビラを手渡すといつた配付方法がとられていなかつたこと、支部のとつた配付方法に対し被告会社は配付につき被告会社の許可をとるよう再三申し入れ警告をなしていること、配付場所の通路が狭いため従業員の出勤に混乱を生ずることは皆無ではなく、特に雨天の日には混乱を生ずる場合のあつたこと、「A」の配付については被告会社はビラボックスを設置して配付方法を考えていること等の事実が明らかであつて、右事実下において、あくまで配付についても自由であるとの考えから自己の立場に固執し、被告会社の指示に従わなかつた原告らの行為は、相当とは言い難い。他に原告らの行為を正当な組合活動として肯定しうる特段の事由は認められない。
 したがつて被告会社が原告らに対し、〈証拠〉を総合して認められる事由すなわち被告主張のごとき原告らの過去の社規違反歴その他の勘案により就業規則一一二条号七(編注、「社員の行為が次の各号の一に該当する場合は情状に応じて譴責、減給、出勤停止、昇給停止、又は降格に処する。」第七号「業務上の指示、命令に従わず会社の秩序を乱したが、その情軽いとき」)を適用して、本件懲戒処分を課したことは被告会社の有する適法な懲戒権の範囲内にあるものというべく、原告らの主張はいずれも理由がない。