全 情 報

ID番号 03576
事件名 損害賠償請求事件
いわゆる事件名 巣鴨警察署事件
争点
事案概要  剣道試合中の負傷につき、使用者に安全配慮義務があるが本件では義務違反はなかったとされた事例。
参照法条 労働基準法2章
民法415条
民法715条
体系項目 労働契約(民事) / 労働契約上の権利義務 / 安全配慮(保護)義務・使用者の責任
裁判年月日 1973年6月11日
裁判所名 東京地
裁判形式 判決
事件番号 昭和46年 (ワ) 6399 
裁判結果 棄却
出典 タイムズ298号260頁
審級関係
評釈論文
判決理由 〔労働契約-労働契約上の権利義務-安全配慮(保護)義務〕
 第二 配慮義務違反
 一 配慮義務
 一般に使用者は被用者に対しいわゆる配慮義務を負うものであるが、本件のように被用者が勤務中負傷した場合、使用者は右配慮義務として負傷の部位程度に応じ被用者に対し必要な治療を受けさせ、かつこれが公務に起因するときは、災害補償に関する法令に従い被用者をしてその権利に属する補償を受けさせるよう具体的事情に応じて手続上の便宜を供与しなければならない。これは使用者の単なる行政取締法上の義務(国家公務員災害補償法八条参照)たるにとどまらず、被用者に対する労働契約上の義務でもあるから、使用者はこの義務を尽くさないとき被用者に対し契約上又は不法行為上の損害賠償義務を負う。また使用者に代つて被用者を監督する者、災害補償事務を担当する者が使用者に属する配慮を尽くさなかつた場合にも使用者は民法七一五条等により損害賠償義務を負う。
 (中略)
 四 右のような事情のもとでは、A、B、C、D、Eら原告の上司と公務災害補償担当者とが、原告の要求に反してよい医師を紹介しなかつたとか、原告の災害補償請求を妨げたとはいえない。また公務災害補償につき右事故直後教示を受けている原告が同年四月まで右補償請求をしない場合、右の者が原告に対し右請求をするよう勧告する等必要な手続上の援助を積極的にしなくても配慮義務違反とはいい難い。
 それ故原告の上司らの配慮義務違反を前提とする原告の損害賠償請求はその余を判断するまでもなく理由がない。