全 情 報

ID番号 03577
事件名 地位保全仮処分申請控訴事件
いわゆる事件名 日本電信電話公社事件
争点
事案概要  飲酒運転による追突事件をおこし、禁錮六月、執行猶予二年の判決を受けたことを理由とする分限免職処分につき、裁量権を誤ったものとされた事例。
参照法条 労働基準法2章
民法1条3項
体系項目 解雇(民事) / 解雇事由 / 企業外非行
裁判年月日 1973年6月22日
裁判所名 高松高
裁判形式 判決
事件番号 昭和46年 (ネ) 102 
裁判結果 棄却(確定)
出典 時報734号97頁/訟務月報19巻8号77頁
審級関係 一審/03676/徳島地/昭46. 3.30/昭和44年(ヨ)65号
評釈論文
判決理由 〔解雇-解雇事由-企業外非行〕
 控訴人が被控訴人を職務適格性なしとして分限免職処分にした判断が裁量権を誤つたものというべきか否かにつき検討する。
 (一) 先ず控訴人が強調するように、飲酒運転による交通事犯に対する世論が、一段と厳しくなつていたことは事実であり、それに伴つて控訴人が職員のその種の事案につき厳格に解釈運用するとの見地は、分限処分を考えるに当つても十分考慮に価いするものというべきである。もつとも控訴人は、後記高知の事例につき身分存続の上申があつた際の昭和四三年九月上旬今後は飲酒のうえ交通事故を起し禁錮以上の刑に処せられた場合、一切身分存続の特別詮議を認めないとの方針が再確認されたなどと主張するが、この主張事実を認めるに足る疎明はないというべく、この点につき原判決の説示(原判決三六枚目裏三行目「高知の職員」以下同三七枚目表一〇行目まで」)と同一であるからそれをここに引用し、なお当番における控訴人の疎明によつてもこの認定を動かすに足りない。
 (二) そこで被控訴人の本件事案や勤務成績などにつきみるに、その詳細は、原判決の認定するとおり(原判決二五枚目表七行目より同二八枚目裏七行目まで)であるからそれをここに引用し、なお当審における控訴人の疎明によつても、この認定を動かすに足りない。
 そこで右認定事実によると、被控訴人は車両の運転を全く予期しないまま飲酒したところ、たまたま集中豪雨という異状事態が発生したため、帰宅できない妻の願いを容れて車両を運転するに至つたものであつて、当時飲酒後或る程度の時間を経過していたこと、被害の程度も比較的軽微で、その弁償についても十分に誠意を示して早期に解決していることや、この件につき被控訴人が新聞紙上などにより特別批判を浴びたわけでもないことをはじめとして、前記引用した原判決認定の諸事情、更に(証拠省略)によると、被控訴人は昭和三八年に道路交通法違反(一時不停止)により罰金二〇〇〇円に処せられたことが認められるにとどまり、未だこの種の事犯を敢行する傾向性ありとなすに足りないことがいずれも看取されるのである。
 (三) 次に当時の公社職員による同種事案及びその処分例と対照して考察するに、原判決添付別紙(一)及び(三)の事案と本件との比較については、いずれも当裁判所の判断は原判決の該当部分の記載(原判決二八枚目裏八行目から三六枚目表五行目まで。ただし三一枚目表六行目「同乗車」を「同乗者」と訂正し、同三五枚目裏三行目「しかも」以下同一〇行目「いるのであり」までを除く)と同一であるから、これをここに引用する。
 (中略)
 そこで以上を総合して按ずるに、被控訴人を排除するのでなければ控訴人の事業の円滑な運営に支障が生ずるとみなければならないような不適格事由を認め難いものというべく、控訴人はその点の判断に当り裁量権を誤つたものといわなければならない。