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ID番号 03609
事件名 解雇無効確認等請求事件
いわゆる事件名 日本電々公社事件
争点
事案概要  日本共産党の地区委員会主催の演説会が行われた際に警備中の警察官に暴行を加えた行為により懲役八カ月、執行猶予三年の刑に処せられた電々公社職員に対する免職処分の効力が争われた事例。
参照法条 労働基準法2章
体系項目 解雇(民事) / 解雇事由 / 名誉・信用失墜
解雇(民事) / 解雇事由 / 企業外非行
裁判年月日 1972年2月28日
裁判所名 山口地
裁判形式 判決
事件番号 昭和44年 (ワ) 160 
裁判結果 棄却(控訴)
出典 訟務月報18巻6号878頁
審級関係 控訴審/広島高/昭50.12.23/昭和47年(ネ)86号
評釈論文
判決理由 〔解雇-解雇事由-名誉・信用失墜〕
〔解雇-解雇事由-企業外非行〕
右認定事実によれば、原告らの敢行した右犯行はその罪質、態様からみて軽視しえないものであり、被害の結果も写真フイルム感光の目的をとげただけでなく、警察官に加療一〇日間位を要する傷害を与えたもので必ずしも軽いものとはいえない。もつとも、右翼団体と主催者側との紛争という事態の発生した原由は、右刑事判決も指摘するように、警察側の警備問合わせに対しこれを一蹴した大会主催者側の責任もさることながら、警察側において、警備活動が万全でなかつたことにもよると認められ、右犯罪事実からみると、右犯行はその発端においては混乱の中になかば偶発的に発生したものともいえるのである。
 しかしながら、このような事情を十分考慮に入れても、右犯行の罪質、態様、被害程度、右事情をも含んだ一切の評価とみられる懲役八月・執行猶予三年という量刑等に鑑みれば、原告の右刑事事件の事案が軽微であり情状が特に軽いものととは断じがたく、右刑の執行猶予の言渡を取消されることなく現在ではすでに猶予期間を経過したことは原告本人尋問の結果および弁論の全趣旨によりこれを認めることはできるが、この事実を斟酌してもなお右判断を左右するに足りない。
 (中略)
 しかるところ、原告が昭和二五年四月電気通信省に職員として採用され、同二七年被告公社が同省の業務を引きつぐやひき続き被告公社職員として勤務してきたものであることは当事者間に争いがなく、(証拠省略)によると、原告は被告公社に奉職して以来約一〇年間余り、被告公社下関電報局において有線通信職として主に電報電話の送受信の職務を担当し、その間、管理職に従事することなく現場の専門技術職として勤務してきたものであることが認められ、このような原告の公社における地位、職種に勘案すると、前記のごとき犯行をなしたことが原告の職務処理能力、職務に対する誠実性に直接影響を及ぼすものとはいいがたいけれども、職務に必要な適格性はこれに尽きるものではないことは前記説示したとおりであつて、原告の敢行した犯罪の事案と併せ考えると、本件免職処分に裁量権の範囲を著しく逸脱した違法があるものとは認めがたいのである。
 以上のとおりであるから、本件免職処分が裁量権を逸脱した違法なものである旨の原告の主張は採用することができない。