全 情 報

ID番号 03611
事件名 転勤命令ならびに休職処分無効確認等請求事件
いわゆる事件名 富士輸送機工業事件
争点
事案概要  組合活動家の東京本社タイピストが遠方の京都営業所への配転を命ぜられ、これを争ったため休職処分とされた事件でその効力が争われた事例。
参照法条 労働基準法2章
労働基準法3章
体系項目 配転・出向・転籍・派遣 / 配転命令権の濫用
休職 / 休職期間中の賃金(休職と賃金)
賃金(民事) / 賃金請求権の発生 / 休職処分・自宅待機と賃金請求権
賃金(民事) / 賃金請求権と考課査定・昇給昇格・降格・賃金の減額
裁判年月日 1972年3月17日
裁判所名 大阪地
裁判形式 判決
事件番号 昭和43年 (ワ) 5906 
裁判結果 一部認容(控訴)
出典 時報675号88頁/タイムズ279号347頁
審級関係
評釈論文 秋田成就・判例評論168号33頁
判決理由 〔配転・出向・転籍・派遣-配転命令権の濫用〕
 本件転勤命令は原告の正当な組合活動を理由とする不利益取扱に該当するもので、無効である
〔賃金-賃金請求権の発生-休職処分・自宅待機と賃金請求権〕
〔休職-休職期間中の賃金(休職と賃金)〕
 原告の賃金請求は、無効な本件休職処分にもとづく原告の就労不能が被告会社の責に帰すべき理由によるものであるために生じた賃金請求権(反対給付請求権)にもとづくものであって、その請求賃金額の範囲は、結局右休職処分がなく、就労を継続していた場合に被告会社から給付さるべき賃金額を合理的、客観的に判定して、確定するほかはないものであり、また、右休職処分の後に労働協約によって賃金の改訂がなされた場合には、これに従って他の同種従業員と同様に処遇せらるべきことも当然といわねばならない。
〔賃金-賃金請求権と考課査定・昇給昇格・賃金の減額〕
 本件賃金協定においては平均的な勤務能力と勤務成績を有し、かつ、勤続年数による企業貢献度も十分な従業員に対しては少くとも賃金協定上明らかな平均査定配分額を下廻らない金額をもって査定による賃上額とすることが協定の運用上前提とされていて査定はこれを基礎として合理的、かつ、公正に運用すべく予定されているものと認めるのが相当である。そうだとすれば、本件のように、いやしくも、被告会社の責に帰すべき事由に起因して査定がなされないときは、右査定の対象とならなかった従業員については査定前における勤務能力、勤務成績がその後低下を来たすべき特段の事情の認められない限り、少くとも当該年度の賃金協定に定められた平均査定配分額をもって、査定が行われていたならば、受くべきであった賃金額とするのが最も合理的であり、かつ、右配分額の判定は客観的にも可能であるから、前記説示にてらし、査定部分についての協定の効力は、右平均査定配分額の限度で原告にも及ぶものと解するのが相当である。