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ID番号 03623
事件名 懲戒戒告処分無効確認請求控訴事件
いわゆる事件名 電々公社ベトナム反戦プレート事件
争点
事案概要  「ベトナム侵略反対、米軍立川基地拡張阻止」と記載したプレートを着用して勤務したことが、就業規則で禁止されている政治活動の禁止に違反するとしてなされた懲戒戒告処分の効力が争われた事例。
参照法条 労働基準法2章
労働基準法89条1項9号
日本電信電話公社法33条
体系項目 労働契約(民事) / 労働契約上の権利義務 / 債務の本旨に従った労務の提供
懲戒・懲戒解雇 / 懲戒事由 / 政治活動
裁判年月日 1972年5月10日
裁判所名 東京高
裁判形式 判決
事件番号 昭和45年 (ネ) 1072 
裁判結果 (上告)
出典 時報666号35頁/東高民時報23巻5号67頁/タイムズ276号114頁/訟務月報18巻11号1698頁
審級関係 上告審/01319/最高三小/昭52.12.13/昭和47年(オ)777号
評釈論文 川口実・法学研究〔慶応大学〕46巻7号123頁/尾吹善人・昭47重判解説15頁
判決理由 〔懲戒・懲戒解雇-懲戒事由-政治活動〕
 当裁判所は被控訴人の本訴請求を認容すべきものと判断するものであつて、その理由は、原判決の理由として記すところを引用する
〔労働契約-労働契約上の権利義務-債務の本旨に従った労務の提供〕
〔懲戒・懲戒解雇-懲戒事由-政治活動〕
 被控訴人の本件プレート着用行為は原判決認定のとおり米国のベトナム戦争への軍事介入に反対する意思を表現したものに外ならないが、右は、同判決認定のごとく、我が国の平和を願う気持に出たものであり、特定の政治的意見に基づく政治活動でもないし、一部の人々の政治的意見、あるいは一党一派の政治政策を表現したものというべきものではなく、前記の我が国民一般の意思を表明したものというべきである。従つて被控訴人がその、職場において本件のような方法で本件プレートを着用しても、他の職員の対抗的政治意識を刺戟するなど、職場の正常な事務の遂行の妨げとなることはなく、また控訴人公社の政治的中立性に背くこともないものと認められる。すなわち被控訴人の本件プレート着用は憲法上公社職員としての被控訴人に許された自由な意思表現行為の範囲に属するものということができる。
 この点からいつても、被控訴人の本件プレート着用行為を控訴公社就業規則第五九条第一八号により懲戒事由とされる同第五条第七項にいう「政治活動」に当るとはいえないと解する。