全 情 報

ID番号 03633
事件名 労働契約関係存在確認等請求事件
いわゆる事件名 村山商店事件
争点
事案概要  荷役中に盗難事故が発生したところ、その場所で就労中の者全員を、真犯人不明のまま元請会社の要請で他に転勤を命じた事件でその効力が争われた事例。
参照法条 労働基準法2章
体系項目 配転・出向・転籍・派遣 / 配転命令権の濫用
解雇(民事) / 解雇事由 / 業務命令違反
解雇(民事) / 解雇の自由
裁判年月日 1972年6月26日
裁判所名 横浜地
裁判形式 判決
事件番号 昭和43年 (ワ) 218 
裁判結果 一部認容・棄却
出典 タイムズ283号219頁
審級関係
評釈論文
判決理由 〔配転・出向・転籍・派遣-配転命令権の濫用〕
〔解雇-解雇事由-業務命令違反〕
 被告は原告らY会社A部の者がB船船上の積荷のスズコ、缶詰を盗んだものであることを前提とし、これに連帯責任を負わせて本件転勤命令を出したものであること明らかなところ、はたして原告らが被告主張のとおり盗んだものであるか否かについては前記認定のとおり本件全証拠によつても断定し得ず、しかも原告らに対し本件転勤命令をなすについて、原告らの労働条件が変るにも拘らずその理由、必要性等を十分に説明し、納得させるような行為をなさず、専ら全員を一括して転勤させることのみ主張して原告らに対処し、本件転勤命令をなしたものであつて、なるほど被告会社横浜営業所の作業量の略一〇〇パーセントはC会社の下請であつて、被告会社にはC会社からY会社A部の者はC会社の下請として依頼する作業に従事して貰つては困るとの申し入れがあつたことや、被告会社の規模等から考えると本件転勤命令自体が直ちに相当な事由がないものとは断定できないが、少くとも原告らに対してなされるについては、労使関係上要請される信義則を著るしく欠くものと言わざるを得ない。
 四 したがつて被告会社が原告らに対し、被告会社川崎営業所へ転勤するよう命じた本件転勤命令は、前記労使間の関係上要請される信義則を欠く無効なものであり、これを拒否したことを理由としてなされた本件解雇の意思表示も、解雇事由がないにも拘らずなされた違法無効なものである。
〔解雇-解雇の自由〕
 解雇権は企業の合理的維持増進に必要な限度で権利の行使として是認されるものと言えるが、本件のように解雇の過程においてその方法が信義誠実に反する場合にまで自由に解雇権を行使し得るものとは認め難く、被告の主張は採用し得ない。