全 情 報

ID番号 03646
事件名 労働契約存在確認等請求事件
いわゆる事件名 昭和室内装備事件
争点
事案概要  会社が時間外労働・休日労働を廃止してそれに伴う賃金低下を防止するために特別の手当を支給しているときに、家具組立工が勤務時間外に許可なく同業他社で就労したとして懲戒解雇された事件でその効力が争われた事例。
参照法条 労働基準法89条1項9号
体系項目 懲戒・懲戒解雇 / 懲戒事由 / 二重就職・競業避止
裁判年月日 1972年10月20日
裁判所名 福岡地
裁判形式 判決
事件番号 昭和44年 (ワ) 1636 
裁判結果 認容
出典 タイムズ291号355頁
審級関係
評釈論文 手塚和彰・ジュリスト552号124頁
判決理由 〔懲戒・懲戒解雇-懲戒事由-二重就職・競業避止〕
 右就業規則七二条一二号、九条一号の趣旨について考えるに、就業規則九条一号において、「他への就業」が禁止されているのは、従業員が他へ就労することによつて会社の企業秩序ないし労務の統制を乱し、またはそのおそれがあるか、あるいは、従業員の会社に対する労務提供が不能もしくは困難となり、企業の生産性の高揚を阻害することを未然に防止することにあると解されるから、会社の企業秩序または労務の統制を乱すおそれがなく、会社に対する労務の提供に格別の支障を生ぜしめない程度のものは、就業禁止の対象とはならないものと解される。
 (中略)
 被告会社の実施した特別措置の目的は、従業員の長時間労働による肉体的疲労度を軽減し、就業時間中の作業能率を向上し、かつその実態調査を試みることにあり、それは一応合理的なものといえるから、これが実施を了承し、特別加算金の支給を受ける者は、その措置中は特に自己または他の従業員の作業能率や意欲を低下せしめるような言動を慎しむべき忠実義務があるのに、原告らは再三にわたる会社側の警告を無視し、許可なく他に就労して、就業の規律を乱し、職場内に他社就労の噂を生ぜしめて、他の商業員の作業意欲を減退せしめる等企業に好ましからざる影響を与えたものと推認するに十分である。
 そうだとすると、原告の他社就労は被告会社の労務の統制を乱したものというべきであるから、就業規則に禁止する「他への就業」に該当するものといわねばならない。