全 情 報

ID番号 03652
事件名 賃金請求事件
いわゆる事件名 福岡県教組事件
争点
事案概要  いわゆる一斉休暇闘争に参加した公立小中学校の教職員につき、右の休暇に該当する勤務時間を欠勤として賃金カットしたケースで右教職員がカット分の賃金を請求した事例。
参照法条 労働基準法24条1項
地方公務員法25条2項
体系項目 賃金(民事) / 賃金の支払い原則 / 過払賃金の調整
裁判年月日 1972年11月20日
裁判所名 福岡地
裁判形式 判決
事件番号 昭和43年 (ワ) 121 
裁判結果 棄却
出典 行裁例集23巻10・11合併号838頁/タイムズ291号357頁
審級関係
評釈論文 橋本勇・地方公務員月報114号51頁/山田二郎・自治研究50巻10号155頁
判決理由 〔賃金-賃金の支払い原則-過払賃金の調整〕
 給与の支給に際しては、複雑な支給事務や、給与を月の中途の一定期日に支給するという一部前払制のため、往々にして過払が生ずるが、これが清算調整の方法として相殺のほかは許されないとする理由はなく、他の方法であつても、それが合理的なものである限り許されるものと解し得る。
 本件の場合は、すでに昭和四一年一一月の給料支給日等においてこれを減額控除しない以上、上叙のように迂遠な方法をとらず、一〇月分の差額追給分から減額分を控除するのがもつとも簡明直截で、法の趣旨にかなう所以でもある。
 (中略)
 地方公務員についても、給与過払による不当利得返還請求権を自働債権とし、その後に支給される給与の支払請求権を受働債権としてする相殺は、過払のあつた時期と給与の清算調整の実を失わない程度に合理的に接着した時期においてなされ、しかもその金額方法等においても地方公務員の経済生活の安定をおびやかすおそれのないものである場合に限り、地方公務員法第二五条第二項による制限の例外として許されると解されるところであり、本件のごとき控除措置も相殺に準ずる清算調整の方法として、右と同様の要件のもとにおいて許されると解するのが相当である。