全 情 報

ID番号 03678
事件名 従業員地位確認請求事件
いわゆる事件名 葵タクシー事件
争点
事案概要  組合役員をしていたタクシー会社の運転手が待時間料金をごまかしたとして解雇されその効力を争った事例。
参照法条 労働基準法2章
労働基準法89条1項3号
労働基準法3章
体系項目 解雇(民事) / 解雇事由 / 不正行為
賃金(民事) / 賃金請求権の発生 / 無効な解雇と賃金請求権
裁判年月日 1971年4月1日
裁判所名 京都地
裁判形式 判決
事件番号 昭和43年 (ワ) 1483 
裁判結果 一部認容・却下
出典 時報646号90頁/タイムズ264号313頁
審級関係
評釈論文
判決理由 〔解雇-解雇事由-不正行為〕
 原告は昭和四〇年七月頃糖尿病で一ケ月入院し、その後も治療を続け、現在に至るも健康状態が必ずしも良好とはいえない状態にあることが認められ、原告の前記欠勤、遅刻もしくは早退の大半は右疾病に起因するものと認められる。従つて原告の前記勤務状態は、必ずしも同人の勤務に対する怠慢の情に出たもので、本件労働契約における不適格性を示すものと断ずることはできず、これのみをもつて、労働契約解約の事由と認められない。
 (中略)
 被告は、組合活動が活発であつたY会社労組に対し、その弱体化をはかる反面、第二組合であるY会社従組の発展を助長して来たが、右組合も昭和四一年頃になつて、反被告的態度を示すようになつたため、その幹部であつた原告らに対し、こころよく思つていなかつたことを推認することができ、また、前記(二)の認当のとおり、被告主張の解雇理由につき、合理性が認められないから、結局、本件解雇は、原告が労働組合員として御用組合から自主的組合への脱皮活動等の労働組合の正当な行為をしたことの故をもつて、なされたものと認めるのが相当である。
 よつて、本件解雇は、不当労働行為として無効であり、原告は被告の従業員としての地位を有するところ、被告において、これを争つているから、原告が右地位にあることの確認を求める利益がある。
〔賃金-賃金請求権の発生-無効な解雇と賃金請求権〕
 本判決確定の日の翌日以後の賃金支払請求については、口頭弁論終結当時被告が原告の就労を拒んでいる場合でも、従業員地位確認請求及び判決確定の日までの賃金請求につき請求認容の本判決が確定する以上、特別の事情のないかぎり、予め判決を求める必要がないと解するのが相当である。