全 情 報

ID番号 03681
事件名 地位保全仮処分申請事件
いわゆる事件名 住友セメント事件
争点
事案概要  飲酒運転によって他人を死亡せしめ、禁錮一〇年、執行猶予三年に処せられたことを理由とする解雇が有効とされた事例。
参照法条 労働基準法2章
民法1条3項
体系項目 解雇(民事) / 解雇事由 / 道交法違反
解雇(民事) / 解雇事由 / 企業外非行
裁判年月日 1971年6月7日
裁判所名 福岡地小倉支
裁判形式 決定
事件番号 昭和45年 (ヨ) 615 
裁判結果 速号
出典 タイムズ267号299頁
審級関係
評釈論文
判決理由 〔解雇-解雇事由-道交法違反〕
〔解雇-解雇事由-企業外非行〕
 一、申請人が昭和四五年九月一八日当庁において業務上過失致死罪により、禁錮一〇月執行猶予三年の判決を言渡されこれが確定したこと、このことを理由として被申請人が同年一一月五日申請人に対して就業規則六〇条一項五号(禁錮以上の刑に処せられたとき)により解雇する旨の意思表示をしたこと、同条二項によれば、執行猶予の場合に限り場所長において特に情状酌量の必要ありと認めたときは、八六条本文の懲戒処分(譴責、減給、出勤停止、降格)に止めることがあることは、いずれも前記第二のとおり当事者間に争いがない。
 二、そこで申請人に対する解雇の効力を検討するに、申請人は就業規則六〇条一項五号の事由に一応該当することは明らかであるが、執行猶予に付されたのであるから、同条二項の適用も当然問題になる。同条二項は、その文言のとおり、解雇しないで出勤停止等の懲戒処分をするにつき、場所長にある程度の裁量を与えた趣旨であることは否定しえないが、この裁量の限界を著しく逸脱し、軽微な事由に対し従業員を企業から放逐する解雇処分をなしたときは、就業規則の適用を誤ったものとして、その解雇は効力ないものと解すべきである。特に執行猶予付禁錮刑に処せられた行為が企業外のものであるときは、従業員の企業外の行動に本来企業は容喙しえないものであるだけに、場所長は事案の内容、企業の社会的信用に対する影響、職場秩序の維持等諸般の事情を考慮して慎重に判断しなければならない。この点につき、前記第二に掲げた本部運営委員会の決議は、それが労働協約と同一の効力を有するだけに(審尋の結果によれば、申請人はY会社労働組合の組合員であつたことが認められる)、右六〇条二項の適用を考える場合有力な資料となるものといわなければならない。即ち、執行猶予を受けた事件が、交通三悪あるいは殺人傷害、強盗等の破廉恥罪およびこれらに類するものに該当する場合は、それでもその従業員を解雇することが著しく苛酷と考えられる特段の事情がある場合を除いて、原則としてその者に対する解雇は有効とすべきであるが、右に該当しない場合は、企業の信用や職場秩序に対する影響が具体的に認められない限り、解雇を無効とすべき場合が多くなるものと考えられる。