全 情 報

ID番号 03728
事件名 金員支払仮処分申請事件
いわゆる事件名 吉村商会事件
争点
事案概要  会社が婦人服製造部門の閉鎖を理由に解雇した者につき、後に横領等の行為があったとして懲戒解雇に変更して退職金等を支払わなかったことに対して、申請人らが解雇予告手当、退職金等を請求した事例。
参照法条 労働基準法20条1項
労働基準法89条1項3の2号
体系項目 解雇(民事) / 解雇予告 / 解雇予告の方法
解雇(民事) / 解雇予告手当 / 解雇予告手当請求権
解雇(民事) / 解雇の承認・失効
賃金(民事) / 退職金 / 退職金請求権および支給規程の解釈・計算
裁判年月日 1986年3月11日
裁判所名 大阪地
裁判形式 決定
事件番号 昭和60年 (ヨ) 4090 
裁判結果 一部認容
出典 労働判例473号69頁
審級関係
評釈論文
判決理由 〔解雇-解雇の承認・失効〕
〔解雇-解雇予告-解雇予告の方法〕
〔解雇-解雇予告手当-解雇予告手当請求権〕
 申請人らにおいて本件通常解雇の効力を争わずにこれを承認し、解雇日とされた日の翌日以降労務の提供を廃止したなどの前記事実関係のもとにおいては、被申請人のした本件通常解雇にその意思表示どおりの効力を認め、申請人らは六月二九日をもって被申請人の都合によって解雇されたものとするとともに、申請人らは被申請人に対し就業規則所定の解雇予告期間に不足する二二日分の平均賃金にする〔ママ〕解雇予告手当請求権を取得したものと解するのが相当である。
 けだし、労働基準法二〇条一項は労働者保護を目的とする規定であるところ、右条項に違反する解雇であっても、労働者がその効力を争わずに承認し、解雇日の翌日以降の労務の提供を廃止した上で解雇予告手当の支払を求めている場合においては、使用者のした解雇の意思表示にその意思表示どおりの効果の生ずることを認める一方、労働者は使用者に対し解雇予告手当請求権を行使できる(なお、労働基準法一一四条、一一九条参照)としても、労働基準法二〇条一項の趣旨にもとることはないものというべきであるから。
 (中略)
 被申請人の就業規則中、解雇予告手当に関する規定の内容及び申請人に対する本件通常解雇の予告期間は所定の予告期間三〇日間に二二日間不足することはいずれも前記のとおりであるところ、被申請人は申請人らに対し六月三〇日までの賃金を支払っているので、申請人らは被申請人に対し二一日分の平均賃金を解雇予告手当として請求できるものというべきである。
〔賃金-退職金-退職金請求権および支給規程の解釈・計算〕
 疎明資料によれば、被申請人の就業規則五二条が、退職者には別に定める退職手当金を支給する旨規定し、これを承けた被申請人の退職金規定がその支給につき細目を規定し、被申請人は被申請人の都合による退職等の場合に退職金を支給する旨定めていること及び申請人らが六月二九日をもって被申請人の都合によって退職した場合の申請人らの退職金が申請人中岡につき三六万円、申請人潮田につき三三万八四〇〇円、申請人松田につき四四万円であることが一応認められる。
 被申請人の申請人らに対する本件通常解雇は被申請人の婦人服製造部門の廃止を理由とするのであるから、申請人らの退職が被申請人の都合による退職に該当することが明らかであるので、申請人らはそれぞれ被申請人に対し右各金員を退職金として請求できる。