全 情 報

ID番号 03733
事件名 地位保全仮処分申請事件
いわゆる事件名 工学院大学事件
争点
事案概要  大学教員が、定年規程の新設により教授としての定年満七〇歳、その後の二年間は暫定特別専任教授としての委嘱を受ける地位に引き下げられたのに対し、教授定年満七三歳、暫定特別専任教授の定年は満七五歳であると主張して地位保全の仮処分を提起した事例(却下)。
参照法条 労働基準法89条
労働基準法93条
体系項目 就業規則(民事) / 就業規則の一方的不利益変更 / 定年制
裁判年月日 1986年3月24日
裁判所名 東京地
裁判形式 決定
事件番号 昭和60年 (ヨ) 2343 
裁判結果 却下
出典 労経速報1253号15頁
審級関係
評釈論文
判決理由 〔就業規則-就業規則の一方的不利益変更-定年制〕
 三 以上の事実によれば、被申請人大学においては、昭和四七年当時には定年制は存在しなかったが、教授会の申し合わせに基づき、教授は満七三歳に達した年度の年度末をもって辞任し、その後二年間は暫定特別専任教授の委嘱を受けるとの運用がされており、申請人もこれを前提として被申請人大学に教授として採用されたものである。ところが、昭和五三年一〇月に定年規程の制定により定年制が新設されたため、申請人の教授としての定年年齢は満七〇歳となり、その後の二年間を暫定特別専任教授としての委嘱を受けることになったというのであるから、これにより、申請人の労働条件は実質的に不利益に変更されたものである。
 しかし、私立大学における実情にかんがみても、大学教授について定年制を設ける必要性が存することはいうまでもなく、六七歳という定年年齢も不当に低すぎるものとはいえない。そして、前記認定の制定の経緯や、これを一律に適用することによる急激な変更を緩和するために長期間にわたって段階的に定年年齢を引き下げる経過措置が設けられ、これによって申請人の場合は定年年齢が七〇歳とされていること、定年後に暫定特別専任教授の委嘱を受けることができることなども考慮すれば、この定年制は十分に合理性を有するものということができる。