全 情 報

ID番号 03748
事件名 従業員地位確認等請求事件
いわゆる事件名 大阪木村コーヒー店事件
争点
事案概要  会社商品の不正持出、売上金の着服横領、自己車両への不正給油、業務命令違反等を理由とする懲戒解雇につき、その効力が争われた事例。
参照法条 民法536条2項
労働基準法89条1項9号
体系項目 賃金(民事) / 賃金請求権の発生 / 無効な解雇と賃金請求権
懲戒・懲戒解雇 / 懲戒権の濫用
裁判年月日 1986年5月12日
裁判所名 大阪地
裁判形式 判決
事件番号 昭和52年 (ワ) 1003 
裁判結果 一部認容
出典 労働判例475号18頁
審級関係
評釈論文
判決理由 〔懲戒・懲戒解雇-懲戒権の濫用〕
 2 以上のとおりであって、本件懲戒事由のうち、認められる、本件不正給油事件の一部、不正持出し事件の一部社員買い手順不履践、業務命令違反事件全部の各個別事情は、前二項1、2、4及び三項1(二)判示のとおりであって、これに三項1(三)(四)及び本件認定事実に現われた全事情を総合して考慮すれば、原告の右懲戒解雇事由たる所為は、従業員特に主任のものとしては種々問題があるにしても、これに対処するに、懲戒手段として、原告を企業外に放逐せねば企業秩序が維持しえない程度の非違行為とは到底いえず、本件解雇処分は、懲戒裁量権の行使を誤ったものという外なく、懲戒権の濫用として無効といわざるをえない。
〔賃金-賃金請求権の発生-無効な解雇と賃金請求権〕
 (一) 以上のとおり、本件解雇は無効であるから、原告は本件解雇がなされた昭和五一年二月九日以降も被告の従業員として雇用契約上の権利、義務を有するというべく、被告が同日以降原告の就労を拒否しつづけていることは当事者間に争いがないところ、叙上の本件解雇無効の事情に照らせば、その有効に固執して右就労拒否をなすことは、結局右原告の労務提供債務は債権者である被告の責に帰すべき事由により履行不能に帰したというべきであるから、原告は民法五三六条二項本文に基づき不就労に拘らず賃金請求権を取得することはいうまでもない。