全 情 報

ID番号 03765
事件名 地位保全仮処分申請事件
いわゆる事件名 横山産業事件
争点
事案概要  子会社A会社を退職した者が、実際は親会社Y会社に雇用されていたのであるとして親会社に対し雇用契約上の地位を有する旨の仮処分を申請した事例。
参照法条 労働基準法10条
労働基準法2章
体系項目 労基法の基本原則(民事) / 使用者 / 法人格否認の法理と親子会社
裁判年月日 1986年8月27日
裁判所名 東京地
裁判形式 決定
事件番号 昭和60年 (ヨ) 2270 
裁判結果 却下
出典 労働判例481号24頁/労経速報1280号17頁
審級関係
評釈論文
判決理由 〔労基法の基本原則-使用者-法人格否認の法理と親子会社〕
 2 次に申請人は、A会社との間に雇用契約が成立したとしても、法人格否認の法理の適用により、A会社の背後にある被申請人が雇用契約上の使用者の地位にある旨、あるいは予備的に、同じく法人格否認の法理の適用により、A会社の背後にある被申請人がA会社の支払うべき未払退職金の支払義務を負う旨主張するのでこの点について判断するに、前示のとおり、A会社は、被申請人の代表者であるBを代表者とするC会社の出資によって設立され、Bがその株式を所有していること、人事面においても設立当初から申請人の採用をBが決定し、昭和五九年一月には自ら代表者に就任していること、またA会社設立中の申請人の給与を被申請人が代払し、また本件疎明によればA会社が休眠状態に陥る数か月前から被申請人の経理課長がA会社の経理をチェックしていることが一応認められ、これらの事実に照らすとBのA会社に対する人事面、資金面の影響力が大きく、また被申請人とA会社も密接な関係にあることが推認される。しかし他方、申請人が被申請人の職務を被申請人の指示に基づいて行っていたという事情もなく、Bの人事面での影響があったとしても、いまだ申請人と被申請人との間に労務の提供について支配従属関係にあったともいえない。またB・被申請人とA会社の経理面や資金面での関係が右のとおりであったとしても右事実をもって直ちに被申請人が法人格を形骸化し、あるいは濫用しているものとはいえず、他にこれを認めるに足りる証拠はない。
 したがって申請人の法人格否認の法理の主張はいずれも理由がない。