全 情 報

ID番号 03766
事件名 地位確認等請求事件
いわゆる事件名 講談社福岡支社事件
争点
事案概要  契約期間を三カ月とし、一年を限度で雇用継続するとの条件で雇用された臨時労働者が、右雇用期間を経過した段階で雇止めされたことに対して、地位確認、賃金の支払を求めた事例。
参照法条 労働基準法21条
体系項目 解雇(民事) / 短期労働契約の更新拒否(雇止め)
裁判年月日 1986年8月27日
裁判所名 福岡地
裁判形式 判決
事件番号 昭和56年 (ワ) 992 
裁判結果 棄却
出典 労働判例480号6頁
審級関係
評釈論文
判決理由 〔解雇-短期労働契約の更新拒否(雇止め)〕
 1 原告は、仮に本件雇用契約に当初は期間の定めがあったとしても、三か月の期間を三回更新したことにより期間の定めの無いものに転化したとも主張する。
 しかし、単に更新を繰返すのみで期間の定めがある契約が直ちに期間の定めのないものに転化することはなく、当事者双方に期間の定めを形式的なものにする旨の意思ないし期待等がある場合に初めて期間の定めのない契約又はこれと実質的に異ならない状態の契約への転化の可能性が生じる余地があると解されるところ、本件においては当初から契約の継続は一年と予定されていたのであり、これ以前の三か月ごとの更新はその当然の結果であってこれによっては何の期待も生じないというべきである。
 2 原告はまた、被告会社におけるこのような臨時雇用者制度はそれ自体公序良俗に反して無効である旨の主張もする。確かに一般に臨時雇用者制度が採用されるのは、そもそも担当業務が一時的・季節的であったり、景気変動による需給にあわせて雇用量の調整を計ったりする必要がある等の場合が多いのに対し、被告会社における臨時雇用者の業務は季節的・一時的なものではなく右場合に該当しない。しかしながら、業務の内容が季節的・一時的なものではないにせよ、あくまでもそれは補助業務に過ぎないのであって、これにつき短期雇用制度を設けることが不合理、不適当ともいえず、また一般的に雇用契約の期間を定めることは、その期間が一年以下である限り寧ろ当事者の自由であって、労働基準法その他の法律上も短期の有期雇用契約を締結すること自体何ら禁じられていないところであるから、このような制度を採用するか否かは広く使用者の裁量に委ねられているというほかなく、ただ、これが専ら法の定める労働条件を潜脱する等の目的で用いられたような場合にのみ公序良俗違反となる余地があるというべきである。そして、本件臨時雇用者制度についてみると、被告会社の意図は賃金抑制にあるけれども、臨時雇用者の担当業務は単純作業で経験により能率向上が望めない補助業務に限られており、このような業務についてのみ一般の社員採用と異なる手続により臨時雇用者として採用することは、企業経営上の合理的必要性に基づくものといい得べく、逆に労働者の立場からみても短期の職場の供給源として一応の合理性が認められるのである。その他に、本件臨時雇用者制度が、原告主張のように、専ら団結権阻害を目的とするものと認めるに足りる証拠はない。
 以上の次第で、本件臨時雇用者制度を公序良俗違反と言うことはできず、この点に関する原告の主張は採用できない。