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ID番号 03787
事件名 労働契約確認仮処分申請事件
いわゆる事件名 平和第一交通事件
争点
事案概要  タクシー運転手に対する隔日勤務(一カ月一三乗務)から日勤(連日)への勤務体制の変更命令につき、労働契約上の労働条件が右隔日勤務である旨の確認を求めた仮処分申請に対し、これを認容した事例。
参照法条 労働基準法2章
体系項目 労働契約(民事) / 労働契約上の権利義務 / 労働義務の内容
裁判年月日 1986年10月28日
裁判所名 福岡地久留米支
裁判形式 決定
事件番号 昭和61年 (ヨ) 135 
裁判結果 一部認容
出典 労働判例499号71頁
審級関係
評釈論文 馬奈木昭雄、三溝直喜・労働法律旬報1169号35頁1987年6月10日
判決理由 〔労働契約-労働契約上の権利義務-労働義務の内容〕
 更に以上認定の事実関係並びに疎明資料によれば、右協定は有効期間の経過により失効したが、債務者と債権者らとの間に締結されている雇傭契約は、一カ月一三日乗務(隔日勤務)を内容とするものであって、このことは右協定の失効や経営者の交替によっても変更はないことが一応認められる。
 そうだとすれば、債務者は、従前の雇傭契約関係が継続している以上、従業員らの承諾なく就業規則の改正等により、その内容を一方的に変更して新ダイヤに基づく乗務を命令することはできない筋合であって、債権者らの主張する被保全権利は、その主張する不当労働行為の成否や債務者の主張する会社の再建方針、新ダイヤの経営合理性等を判断するまでもなく、その雇傭契約の勤務時間に関する労働条件が一カ月一三日乗務(隔日勤務)制であることの確認を求める部分については相当といわざるを得ない(別紙勤務表中その余の記載部分は、すでに失効した労働協約の内容であって、認容のかぎりでない。)。
 但し、債権者X1、同X2は、債務者によって解雇され、現にその効力を争う仮処分事件が当裁判所に係属していることが顕著な事実であり、本件で雇傭契約の存在を首肯するに足る疎明が十分とはいえないから爾余の点を判断するまでもなく、申請は失当として却下を免れない。
 その余の債権者らについては、債務者が新ダイヤによる勤務を一方的に命じていること、疎明資料によれば右債権者らはいずれも債務者から支払われる賃金をもって主要な生活手段としているところ、このままでは争議が解除されても雇傭契約の内容に従う労働力の提供による賃金の支払いをうけることができない状態となっていて生活が破壊される危険があると認められることにてらして、保全の必要性も首肯することができる。