全 情 報

ID番号 03828
事件名 懲戒解雇無効確認請求事件
いわゆる事件名 国鉄新潟支社事件
争点
事案概要  成田空港二期工事反対闘争において公務執行妨害罪、兇器準備集合罪により逮捕された国鉄職員に対する懲戒免職処分の効力が争われた事例。
参照法条 日本国有鉄道法31条1項
労働基準法89条1項9号
体系項目 懲戒・懲戒解雇 / 懲戒事由 / 職務外非行
裁判年月日 1989年3月2日
裁判所名 新潟地
裁判形式 判決
事件番号 昭和60年 (ワ) 163 
裁判結果 棄却
出典 労働判例535号6頁/労経速報1367号7頁
審級関係
評釈論文
判決理由 〔懲戒・懲戒解雇-懲戒事由-職務外非行〕
 (一) 企業が社会において活動するものであることを考えると、従業員の職場外の行為であるからとの理由だけで、これを一切規制の対象とすることはできないと一概に断ずることはできず、その社会的評価の低下毀損につながるおそれがあると客観的に認められるような所為については、それが職場外でなされた職務遂行に直接関係のないものであったとしても、なお広く企業秩序の維持確保のために、これを規制の対象とすることが許される場合もありうるといわなければならない。そして、国鉄のように極めて高度の公共性を有する公法上の法人であって、公共の利益と密接な関連を有する事業の運営を目的とする企業体においては、その事業の運営内容のみならず、さらに広くその事業のあり方自体が社会的な批判の対象とされ、その事業の円滑な運営の確保と並んでその廉潔性の保持が社会から要請ないし期待されているというべきであるから、その企業体の一員たる国鉄職員の職場外における職務遂行に関係のない所為に対しても、一般私企業の従業員と比較して、より広い、かつ、より厳しい規制がなされうる合理的な理由があるということができる。
 ところで、国鉄法三一条一項は、国鉄職員が同項一号、二号に掲げる事由に該当した場合に懲戒処分をなしうる旨を定め、同項一号は、懲戒事由として、「この法律又は日本国有鉄道の定める業務上の規程に違反した場合」を挙げているところ、右の業務上の規程とは、国鉄がその従業員に対し遵守を要するものとして定めた規程を意味するものであって、結局いかなる事由を懲戒事由とするかを、国鉄が企業秩序の維持確保という見地から定めるところに委ねたものと解されるのである。そして、右の業務上の規程に当たる国鉄就業規則一〇一条一七号の「その他著しく不都合な行為があった場合」という規定は、同条一六号の「職員としての品位を傷つけ、又は信用を失うべき非行のあった場合」という規定と対比すると、単に、職場内又は職務遂行に関係のある所為のみを対象としているものではなく、国鉄の社会的評価を低下毀損するおそれがあると客観的に認められる職場外の職務遂行に関係のない所為で著しく不都合なものと評価されるようなものをも包含するものと解することができる。そして、右規定は、さらに具体的な業務阻害等の結果の発生をも要求しているものとまで解することはできない。
 (二) 本件につきこれをみるに、原告の本件所為は、職場外でなされた職務遂行に関係のないものではあるが、前記三認定のとおり、過激派集団と行動を共にし、公務執行中の警察官に対し暴行を加え現行犯逮捕されたというものであって、著しく不都合なものと評価しうることは明らかで、それが国鉄の職員として相応しくないもので、国鉄の社会的評価を低下毀損するおそれがあると客観的に認めることができるものであるから、国鉄法三一条一項及びこれに基づく国鉄就業規則一〇一条一七号所定の事由に該当するものといわなければならない。