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ID番号 03837
事件名 雇用関係存在確認等請求事件
いわゆる事件名 兵庫県県立図書館職員事件
争点
事案概要  県立図書館の職員が、職員として採用される約二年半前の学生時代に犯した罪により、採用から約五年後に懲戒一〇カ月、執行猶予二年の判決を受け、確定した後に、地方公務員法二八条四項に基づき失職した旨の通知を受け勤務を拒まれたため、雇用関係確認等の請求をした事例。
参照法条 地方公務員法28条4項
体系項目 労働契約(民事) / 公務員の採用
裁判年月日 1989年1月17日
裁判所名 最高三小
裁判形式 判決
事件番号 昭和62年 (行ツ) 119 
裁判結果 棄却
出典 時報1303号139頁/タイムズ693号54頁/労働判例533号21頁/判例地方自治62号37頁
審級関係 控訴審/06095/大阪高/昭62. 7. 8/昭和59年(行コ)6号
評釈論文 岡田信弘・判例セレクト’89〔法学教室113別冊付録〕8頁1990年2月/森英樹・法学セミナー34巻8号94頁1989年8月/村井龍彦・民商法雑誌101巻4号614~617頁1990年1月/田中舘照橘・法令解説資料総覧89号72~77頁1989年6月/平井二郎・最高裁労働判例〔10〕―問題点とその解説385~398頁1991年3月/和田進・平成元年度重要判例解説〔ジュリスト臨時増刊957〕18~19頁1990年6月
判決理由 〔労働契約-公務員の採用〕
 地公法二八条四項、一六条二号は、禁錮以上の刑に処せられた者が地方公務員として公務に従事する場合には、その者の公務に対する住民の信頼が損なわれるのみならず、当該地方公共団体の公務一般に対する住民の信頼も損なわれるおそれがあるため、かかる者を公務の執行から排除することにより公務に対する住民の信頼を確保することを目的としているものであるところ、地方公務員は全体の奉仕者として公共の利益のために勤務しなければならず(憲法一五条二項、地公法三〇条)、また、その職の信用を傷つけたり、地方公務員の職全体の不名誉となるような行為をしてはならない義務がある(同法三三条)など、その地位の特殊性や職務の公共性があることに加え、わが国における刑事訴追制度や刑事裁判制度の実情のもとにおける禁錮以上の刑に処せられたことに対する社会的感覚などに照らせば、地公法二八条四項、一六条二号の前記目的には合理性があり、地方公務員を法律上このような制度が設けられていない私企業労働者に比べて不当に差別したものとはいえず、また、条例に特別の定めがある地方公共団体の地方公務員と右特別の定めがない地方公共団体の地方公務員との間には失職に関しその取扱いに差異が生ずることになるが、それは各地方公共団体の自治を尊重した結果によるものであって不合理なものとはいえず、地公法二八条四項、一六条二号が憲法一四条一項、一三条に違反するものでないことは、当裁判所の判例(昭和三一年(あ)第六三五号同三三年三月一二日大法廷判決・刑集一二巻五〇一頁、同三七年(オ)第一四七二号同三九年五月二七日大法廷判決・民集一八巻四号六七六頁、同五七年(あ)第六二一号同六〇年一〇月二三日大法廷判決・刑集三九巻六号四一三頁)の趣旨に徴して明らかである。