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ID番号 03905
事件名 陸上自衛官たる地位確認請求事件
いわゆる事件名 陸上自衛官事件
争点
事案概要  陸士長として継続任用されなかった自衛官が二年の任用期間の満了によって自衛官としての地位を失うか否かが争われた事例。
参照法条 自衛隊法36条1項
体系項目 労働契約(民事) / 公務員の採用
裁判年月日 1989年1月26日
裁判所名 東京地
裁判形式 判決
事件番号 昭和58年 (行ウ) 171 
裁判結果 一部棄却,一部却下(確定)
出典 行裁例集40巻1・2合併号36頁/時報1307号151頁/タイムズ708号184頁/労働判例534号42頁
審級関係
評釈論文
判決理由 〔労働契約-公務員の採用〕
 右の各規定の趣旨は、陸士長等の任用期間は原則として二年であり、陸士長等に任用されたものは、任用の日から二年間に限り自衛官としての地位を取得し、継続任用がなされた場合には、本来生ずべき任用期間満了による退職の効果の発生が阻止され、その地位が継続するとするものである。したがって、継続任用がなされない場合には陸士長等は、任用期間の満了によって当然退職し、自衛官としての地位を失うことになる。
 (中略)
 自衛官は、他の一般職の公務員には見られない防衛出動(法七六条、八八条)という任務に従事するものであり、かかる場合に、陸士長等は、相当長期間に亘り生命身体を危険にさらしながら肉体的、精神的な緊張の連続の下で行動することになるものであるから、それに耐えうる強靭な体力、気力及び持久力を備えていることが必要であり、そのためには、常に右のような体力、気力及び持久力を有する壮健な身体を保持することが必要であることはいうまでもない。右のような陸士長等の職務内容と強靭な体力、気力及び持久力が必要とされることに鑑みると、高齢者では右の任務に耐えられないことが明らかであるばかりか、かえって部隊行動の効率を阻害するおそれすら生ずることは明白である。したがって、右の危険を回避するためには、常に陸士長等の新陳代謝をはかり、若く壮健な陸士長等を常時確保し、精強な部隊を編成・維持することができる制度が必要不可欠となる。したがって、陸士長等について任期制を設けることは、右の目的により適合するものと考えられ、さらに一定の定員数の下における右の円滑な新陳代謝の確保及び法第五章第五節において設ける予備自衛官の制度の充実を併せ考えれば、陸士長等の任用期間が二年とされていることには十分合理的な理由がある。また、曹以上の隊員の職務内容は、陸士長等を指揮・監督するものであって、陸士長等と比較し、豊富な知識、経験を必要とし、そのためには長期に亘って勤務し、知識・経験を積むことが必要であって、定年制がより望ましいものである。右のように、自衛官と一般職の国家公務員及び地方公務員、また等しく自衛官でも陸士長等と曹以上の階級の者とでは、その職務の内容及び職務の遂行に要求される事柄に差異があり、これに応じて任用期間についてそれぞれ異なる取扱いをすることには十分な合理性があるものといわなければならない。したがって、陸士長等について任用期間の定めがなされていることをもって憲法九条、一四条の規定に違反するものということはできない。