全 情 報

ID番号 03932
事件名 賃金請求事件
いわゆる事件名 ロイヤルハイム事件
争点
事案概要  マンションの住込管理人につき、夫婦が雇用されたものとして、夫婦の休日勤務手当等が請求された事例。
参照法条 労働基準法9条
労働基準法2章
体系項目 労基法の基本原則(民事) / 労働者
労働契約(民事) / 成立
裁判年月日 1988年2月26日
裁判所名 神戸地
裁判形式 判決
事件番号 昭和60年 (ワ) 1071 
裁判結果 棄却
出典 労働判例518号81頁/労経速報1318号3頁
審級関係
評釈論文
判決理由 〔労基法の基本原則-労働者〕
〔労働契約-成立〕
 2 確かに被告の帳簿上、被告が原告ら両名に対し、それぞれ月額八万円の給与を支給する取扱いをしていた事実は当事者間に争いがないが、雇傭関係の成否は、単に帳簿上の取扱いにより形式的に確定さるべきものはなく、雇傭時の状況及びその後の経緯等の実質により判断するのが相当であると解される。
 そこでまず雇傭時の状況について考えるに、(証拠略)によれば、昭和五八年一一月三〇日、被告が本件の採用面接をなした際、原告X1は、自己の妻は「A」といい、夫婦住込で勤務したいと申出て、被告から月額給与(基本給)一六万円で採用されたこと、しかし同年一二月一六日ころの給与支給の段階になって、原告X1は被告に対し、「A」は実は原告X2であっていわゆる内縁の関係にある者であり、正妻は別に存在するが、健康保険、雇用保険及び厚生年金等では、原告X2を配偶者として申告しており、厚生年金の受給等に支障があるので、被告の支給する月額一六万円の給与については原告X2と原告X1とに各八万円づつ支給する形式を採ってほしいと申出たことを認定することができ(右認定に反する原告X1の本人尋問の結果はにわかに措信できず、他に右認定に反する証拠はない。)
 (中略)
 右認定事実によれば、被告は原告X1を夫婦住込の管理人として雇傭してきたものであり、ただ原告らの都合により給料だけは原告ら両名に支給したように帳簿上操作してきたものにすぎないことが認められ、これに反する原告X1本人尋問の結果は前顕書証等に対比してにわかに措信することができず、他に右認定を覆すに足りる証拠はない。
 3 すると、被告は原告X1のみを住込管理人として雇傭したものというべきであるから、自己も管理人として雇傭されたことを前提とする原告X2の本訴請求は、その余の点について判断するまでもなく、理由がない。