全 情 報

ID番号 03974
事件名 不当労働行為却下・棄却命令取消請求事件
いわゆる事件名 横浜中央簡易保険払込団体連合会事件
争点
事案概要  郵政省の行う簡易生命保険の払込に関して約款に基づいて団体取扱を受けるために設立された「払込団体」の右団体の集金人に対する使用者性が争われた事例。
参照法条 労働基準法10条
労働組合法7条
労働組合法27条
体系項目 労基法の基本原則(民事) / 使用者 / 使用者の概念
裁判年月日 1988年6月14日
裁判所名 横浜地
裁判形式 判決
事件番号 昭和59年 (行ウ) 17 
裁判結果 棄却(確定)
出典 タイムズ693号120頁/労働判例526号59頁
審級関係
評釈論文
判決理由 〔労基法の基本原則-使用者-使用者の概念〕
 不当労働行為制度は、労働契約上の責任追及を目的とするものではなく、労働者の労働関係上の諸利益を不当におびやかすような行為の排除を目的としているから、労働契約の当事者であるかどうかにかかわらず、形式(労働契約)上は第三者の地位に立つものであっても、当該労働者の人事その他の労働条件などの労働関係上の諸利益に対し現実的かつ具体的な影響力ないし支配力を及ぼし得るものは、不当労働行為の主体たる「使用者」に含まれるものと解するのが相当である。
 (中略)
 右認定事実を総合すれば、払込団体の結成自体、訴外国(横浜中央郵便局)が積極的に指導したものであり、その代表者、役員の選任など払込団体の運営にも、訴外国(横浜中央郵便局)は相当程度関与していることから、原告Xら集金人において、連合会等の払込団体の運営について実質的な決定権を有していたのは訴外国(横浜中央郵便局)であって、連合会はその傀儡にすぎないとの印象を抱くに至ることも、理解できないではない。
 しかしながら、右認定のとおり、簡易生命保険の団体取扱制度は、本来、訴外国(郵便局)が行う保険料の集金業務を払込団体に委託するものであるから、訴外国(郵便局)が連合会等の払込団体に対し、業務上必要な指導、助言を行うのは当然のことであり、ことに、団体取扱制度の悪用や不正な募集が社会問題化するに至って、業務上の指導は強化されたものと推認することができる。
 このような観点からみると、右認定にかかる訴外国(横浜中央郵便局)の諸行為は、いずれも業務上必要な指導、助言の範囲内のものということができる。
 したがって、右認定事実から直ちに、訴外国(横浜中央郵便局)が実質的経営者であるとし、原告Xら集金人の労働条件等労働関係上の諸利益に対し、現実的かつ具体的な支配力を有していたものと認めることはできず、他にこれを認めるに足りる証拠はない。
 また、訴外国(横浜中央郵便局)が、連合会の解散に伴う原告Xら集金人の解雇について、具体的に指示していたとの事実を認めるに足りる証拠もない。 以上によれば、訴外国は本件について当事者適格(被申立人適格)を有しないとして、国に係わる本件救済申立てを却下した本件命令は正当であり、原告らの主張するような違法はない。