全 情 報

ID番号 03983
事件名 賃金請求事件
いわゆる事件名 モデルハイヤー事件
争点
事案概要  賃金は基本給と月算分合給の二本建てで、年休を取得した際の手当が健保法三条の標準報酬日額または基本給日額と定められていたため、年休を取得した場合に賃金が減少することになり、年休取得を抑制するものであるとして、是正された仮想営収方式により計算された賃金との差額が請求された事例。
参照法条 労働基準法39条
体系項目 年休(民事) / 年休取得と不利益取扱い
裁判年月日 1988年7月7日
裁判所名 高知地
裁判形式 判決
事件番号 昭和60年 (ワ) 349 
裁判結果 (控訴)
出典 労働民例集39巻4号253頁/タイムズ690号200頁/労働判例536号67頁/労経速報1359号14頁
審級関係
評釈論文 香川孝三・ジュリスト959号119~121頁1990年7月1日
判決理由 〔年休-年休取得と不利益取扱い〕
 労働基準法三九条の定める年休制度は、同法三五条の休日のほかに有給の休暇を与えて余暇を確保し、労働力の再生産を図るとともに、労働者に社会的、文化的生活を保障することを目的とし、これを達成するため、労働をしないにもかかわらず、平均賃金、通常の賃金、標準報酬日額に相当する金額のいずれかを支払うこととするものであるが、その平均賃金等のいずれによるにせよ、休暇を取らずに稼働したならば得られたであろう賃金の全額が確保されることにはならない(標準報酬日額は、毎年一定時期の賃金を一定期間適用するというもので、勤務したならば得られたであろう賃金とは一致せず、それより低額であり、平均賃金及び通常の賃金も同様である。)から、同法三九条の年休手当の定めは、賃金の全額を保障するものではなく、かえつて、それを下回ることを予想、是認しているといわざるを得ないので、年休を取つたことにより賃金がある程度減少することは、年休制度に内在する制約として甘受せざるを得ないものである。
 2 もつとも、労働条件に関する不利益な取扱いが、年休の取得を事実上抑制するものであるときは、その内容と程度いかんにより、その取扱いは、年休制度の趣旨に反し、ひいては民法九〇条に該当することがあると考えられるが、本件の場合、原告らの賃金は、もともと労使間において基本給と月算歩合給の二本立とする旨合意しているものであつて、そういう賃金体系自体につき、原告らが年休を取つたことを理由に被告が賃金をカツトするなど不利益な取扱いをしているわけではない。