全 情 報

ID番号 04017
事件名 仮処分異議事件
いわゆる事件名 国鉄梅小路駅事件
争点
事案概要  勤務確定後になされた担務変更命令の拒否を理由とする停職処分が無効とされた事例。
参照法条 労働基準法89条1項9号
体系項目 懲戒・懲戒解雇 / 懲戒事由 / 業務命令拒否・違反
裁判年月日 1988年9月28日
裁判所名 京都地
裁判形式 判決
事件番号 昭和62年 (モ) 437 
裁判結果 認可
出典 労働判例526号12頁
審級関係 控訴審/06108/大阪高/平 1. 9.29/昭和63年(ネ)1958号
評釈論文
判決理由 〔懲戒・懲戒解雇-懲戒事由-業務命令拒否・違反〕
 次に、成立に争いのない(証拠略)によれば、国鉄の就業規則細則職員勤務基準規程三三条には、【1】 勤務予定表は、毎月二五日までに翌一箇月分を作成し公表する。【2】 勤務は四日前に確定する。【3】 勤務確定後、やむを得ない場合は、本人の生活設計を十分配慮して勤務の変更を行うことができる、と規定していること、特に勤務当日に行う勤務変更は、本人の生活設計に対し最大限の配慮を行うなど、慎重に行うことが必要であると解されていること、等の各事実が疎明される。
 そこで業務命令の適否につき判断するに、A助役らは、同月一三日の一昼夜交代勤務の補填につき、前記認定のように、その所属職員らに勤務変更の打診をなすなどして勤務操配につき努力したことは認められるものの、申請人両名は、同月一二日になされた勤務変更の打診に対し当初から拒絶の意思を強く表明していたうえ、その後用事がある旨を告げていること、また、仮に被申請人の主張のように、申請人両名が勤務変更を拒絶する意思を表明するだけで用事のある旨を告げていなかったとしても、A助役らは、人活センターへの担務指定により生じた勤務の補填のために、本人の意思に反してでも申請人らに翌日の一昼夜交代勤務の業務命令を発する事態に立ち至る事は、二、三日前からの経緯から電話の際に予想できたうえ、もし申請人らが右業務命令に従わないときは、同人らが懲戒処分に処せられる可能性のあることは管理者として当然予見できることであったから、同人らが勤務変更を拒否する意思を明確に示している限り、同月一二日の電話の際に、あるいは、同月一三日の朝業務命令を発する前に同人に用事の有無やその内容を問い正(ママ)すなど同人らの生活設計に対しきめ細かい十分な配慮をなして業務命令を発すべきであったというべきであるから、いずれにしても、申請人らの生活設計に対する十分な配慮を怠ったものと認められる。
 ところで、申請人らに対する本件停職処分は、B助役が昭和六一年七月一三日午前八時三一分に発した申請人らに対する同日の一昼夜交代勤務を命ずる旨の業務命令を無視して同日午後五時二九分ころ勤務を放棄したことを理由とするものであるが、右B助役の発した右業務命令は、前記のように、勤務変更の要件である申請人らの生活設計を十分配慮しておらず、勤務変更の要件を著しく欠いたうえに発せられたと認められるうえ、前記一、四、五、六、七(一)ないし(一七)の各事実を総合して勘案すれば、無効というべきであり、このため右業務命令違反を理由とする本件停職処分もまた効力を生じないものといわざるをえない。