全 情 報

ID番号 04059
事件名 地位保全仮処分申請事件
いわゆる事件名 東日本旅客鉄道事件
争点
事案概要  夜間他人の住居に侵入したことにより住居侵入罪として一万円の罰金に処せられたこと、および勾留期間中の六日間の欠勤を理由とする懲戒解雇が有効とされた事例。
参照法条 労働基準法89条1項9号
体系項目 懲戒・懲戒解雇 / 懲戒事由 / 職務外非行
懲戒・懲戒解雇 / 懲戒事由 / 職務懈怠・欠勤
裁判年月日 1988年12月9日
裁判所名 東京地
裁判形式 決定
事件番号 昭和63年 (ヨ) 2254 
裁判結果 却下
出典 時報1298号148頁/労経速報1345号23頁
審級関係
評釈論文
判決理由 〔懲戒・懲戒解雇-懲戒事由-職務外非行〕
〔懲戒・懲戒解雇-懲戒事由-職務懈怠・欠勤〕
 債権者の解雇理由となった事由のうち、住居侵入の点は、債務者の組織、業務等には関係のない私生活の範囲内で行われたものであって、債権者の受けた刑罰も罰金一万円に止まるものではある。しかし、侵入の態様からすると、酔余、いわば無意識のうちに他人の住居に入り込んだといったものではなく、一定の目的をもった意図的な行為であるというべきであり、A、その家人及び近隣の人々が、下着盗を目的としたものと理解したのも無理からぬものがあるのであって、債権者の右所為は、破廉恥かつ悪質なものと評価しうる(この評価は、債権者の受けた刑罰が罰金一万円にすぎないことを考慮しても変わりはない。)。
 ところで、債務者は、社会の関心を集めたいわゆる国鉄の分割・民営化の一環として設立された会社であって、いわゆる民間会社として発足はしたもののその営む事業内容は公共性を有するものである。そして、債権者の住居侵入は、債務者の発足して五か月たらずの時期になされたものであって、債務者としても、新たな企業理念等を掲げ、従業員にも意識の変革を求めるなどして、健全なる企業経営を目指しており、それのふさわしい社会からの新たな評価を獲得することを必要としてした時期であり、また、社会も職員の行状をも含めその動向に注目していた時期であることは容易に推認できる。そのような時期であっただけに、債権者の所為の前説示の性質、それに対する近隣の人々の話題の内容等をも考慮すると、債権者が、債務者の極めて多数の従業員の中で、右一1認定のような地位にあって、同認定のような職務を担当しているにすぎなかったとしても、その右所為によって債務者の社会的評価を低下毀損させ、ひいては職員の新生の意気を阻喪させる相当大きなおそれが客観的には存したということができる。
 それに加えて、債権者は、六日間の欠勤という企業秩序に反する結果をも生じさせている。これも、直接的には、勾留されたためであるが、最終的には債権者の住居侵入の所為のためといいうる。
 これらを併せ考えると、債権者の本件住居侵入の所為及びこれによる六日間の欠勤は、併せて債務者の就業規則第一四〇条一二号に定める「その他著しく不都合な行為を行った場合」との懲戒事由に該当するというべきである。