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ID番号 04069
事件名 賃金支払請求控訴事件
いわゆる事件名 駒姫交通事件
争点
事案概要  深夜労働に従事したタクシー運転手に対して深夜手当が払われている場合における深夜割増賃金の算定が争われた事例。
参照法条 労働基準法37条2項
体系項目 賃金(民事) / 割増賃金 / 割増賃金の算定基礎・各種手当
裁判年月日 1988年12月22日
裁判所名 大阪高
裁判形式 判決
事件番号 昭和62年 (ネ) 337 
裁判結果 取消
出典 タイムズ690号195頁/労働判例531号7頁/労経速報1347号10頁
審級関係 一審/03014/神戸地/昭62. 2.13/昭和57年(ワ)1463号
評釈論文
判決理由 〔賃金-割増賃金-割増賃金の算定基礎・各種手当〕
 控訴人会社では、仮眠時間に入る午前二時以降に、洗車、納金による深夜残業が見込まれていたので、これに対する深夜残業の割増賃金として、全員が〇.五時間の深夜残業に従事したものとして、別紙計算表(二)に記載の通り、基本給と歩合給の合計額に、〇.〇四六を乗じた額を支払うことにした。
 (6) したがって、控訴人の支払う深夜割増賃金は、基本給と歩合給の合計額に、右〇.〇七と〇.〇四六とを加えた〇.一一六(一一.六パーセント)を乗じた額である。
 (中略)
 そうとすれば、控訴人会社が、昭和四八年六月二〇日以降その従業員(運転手)に支給していた賃金のうち、労働基準法三七条所定の割増賃金算定の基礎となる賃金(以下「通常賃金」ともいう)は、基本給と歩合給の合計額であって、これに〇.一一六(一一.六パーセント)を乗じて算出した額であるいわゆる「深夜手当」は、名実ともに、右同条に定める法定の深夜割増賃金であったというべきである。
 (中略)
 以上認定の事実からすれば、控訴人会社では、昭和四九年頃以降、午後一〇時から翌朝午前二時三〇分までの深夜労働等に従事しなかった昼勤者に対しても、右深夜労働等に現実に従事した者と同一の率及び方法で算出した手当を支給し、また、隔勤者及び夜勤者に対し、その者が現実に午後一〇時から翌朝二時三〇分までの深夜労働等に従事しなかった場合でも、一か月の水揚げ額が二一万四五〇〇円以上の場合には、前同様の率及び方法で算出した手当を支給していたけれども、前記昭和四八年六月二〇日に控訴人会社と労働組合との間で締結された協定書による労働契約(これは現在でも有効に存続している)では、労働基準法三七条所定の割増賃金を算出する場合の基礎となる通常の賃金は、基本給と歩合給の合計額とされ、これに、前記乗率〇.一一六(一一.六パーセント)を乗じて算出した額は、深夜割増賃金とされているから、これに基づき、隔勤者及び夜勤者に支払われてきた「深夜手当」は、労働基準法三七条所定の深夜割増賃金というべきである。